元体操のお兄さんとキャンプ場で過ごし、筋肉と優しさに包まれた日――。
 少し休憩した後、テントに戻った。

 テント前まで来た時、空を見上げるとひとつひとつの星がはっきりと綺麗に瞬いていた。

「あ、碧、空見て! 星が凄く綺麗だよ」
「わぁ、めっちゃ綺麗!」

 碧は赤ちゃんの頃の夜泣きが凄くて。でもそんな時に外に出て星や月を眺めると、毎回ではないけれど、泣き止む時が結構あった。最近もたまに一緒に星や月を眺める時があって、碧は毎回じっと見つめていた。

「綺麗ですね」と、お兄さんも空を見上げた。

 三人揃って無言で星を見つめていた時「ねぇ、碧ちゃん! あそこに見える星の並び方、紐つかむおじさんに見えない?」とお兄さんが大きめな声で言った。

「どれ? 全然分からない」
「お兄さん、多分へび座とへびつかい座のことですかね?」
「……そうかもです! 碧ちゃん、あそこの星は――」
「どれ?」
「肩車したら見えるかな? 碧ちゃん、おいで?」

 いつの間にか碧とお兄さんの心の距離も縮まっていた。仲良く笑いながら話をしているふたりを見つめると、どうしてだろう、涙が出てきた。ふたりに涙がバレないようにそっと手で目尻を拭った。

 星も見終わり、あっという間に私達の就寝時間になる。お兄さんと過ごせる時間に限りがあることを意識すると、切ない。

「もしもトイレ行くの怖いとか……何かあったらいつでも声をかけてください!」

 お兄さんは、テントの中に戻る時も気にかけてくれた。微笑み合うとテントの中へ。

 碧は寝袋の中に入ると、予想通りにすぐに眠った。
 碧の可愛い寝顔を確認すると、今日一日の幸せを思い出しながら、私も眠りについた。

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