元体操のお兄さんとキャンプ場で過ごし、筋肉と優しさに包まれた日――。
外に出るとお兄さんは両手を上にあげ、スクワットをしていた。
「お兄さん、おはよ!」
「碧ちゃん、おはよう!」
碧は満面の笑みを浮かべ、明るい声で挨拶をした。そしてお兄さんの横に並んで、動きを真似する。並んで筋トレをしている姿は、眺めているだけで癒される。
眺めていると、まさかのダンスを踊り出した。碧が幼き頃、テレビ越しに観ていた、あの、毎日子供番組で踊っていたダンス。
お兄さんと碧がこのダンスを並んで踊っている。その光景を観覧できるなんて、あの頃は全く想像できなかった。私はふたりを客席でそっと見守る気持ちになりながら、凝視した。
しばらくすると、筋トレやダンスに飽きたっぽい碧が私の隣に来る。
「ママ、お腹空いた」
「そういえば、まだ食べてなかったね。朝ご飯、食べよ!」
お兄さんの動きが止まり「あの……」と、あらたまった様子で話しかけてきた。私はお兄さんを見つめ、続く言葉を待つ。
「朝ご飯、何の予定でしたか?」
「パンを食べようかと」
「消費期限いつまでですか?」
パンの袋を見て確認してみる。
「明後日まで大丈夫です」
「もしよければ、これからインスタントラーメンをカセットコンロと鍋で作るので、一緒にどうですか?」
「ラーメン食べたい!」
私よりも先に碧が返事をした。
「じゃあ、お願いします」
更にお兄さんからしてもらったことが積み重なっていく。ありがたい気持ちと、なんだか申し訳ない気持ちも。
「コーヒーも飲みます?」
「あ、はい。ありがとうございます」
お兄さんはテキパキと朝ご飯の準備を始めた。
朝ご飯が終わって少し経てば、もう帰る時間。
お兄さんと離れる時間――。
私はそっと、小さくため息をついた。
「お兄さん、おはよ!」
「碧ちゃん、おはよう!」
碧は満面の笑みを浮かべ、明るい声で挨拶をした。そしてお兄さんの横に並んで、動きを真似する。並んで筋トレをしている姿は、眺めているだけで癒される。
眺めていると、まさかのダンスを踊り出した。碧が幼き頃、テレビ越しに観ていた、あの、毎日子供番組で踊っていたダンス。
お兄さんと碧がこのダンスを並んで踊っている。その光景を観覧できるなんて、あの頃は全く想像できなかった。私はふたりを客席でそっと見守る気持ちになりながら、凝視した。
しばらくすると、筋トレやダンスに飽きたっぽい碧が私の隣に来る。
「ママ、お腹空いた」
「そういえば、まだ食べてなかったね。朝ご飯、食べよ!」
お兄さんの動きが止まり「あの……」と、あらたまった様子で話しかけてきた。私はお兄さんを見つめ、続く言葉を待つ。
「朝ご飯、何の予定でしたか?」
「パンを食べようかと」
「消費期限いつまでですか?」
パンの袋を見て確認してみる。
「明後日まで大丈夫です」
「もしよければ、これからインスタントラーメンをカセットコンロと鍋で作るので、一緒にどうですか?」
「ラーメン食べたい!」
私よりも先に碧が返事をした。
「じゃあ、お願いします」
更にお兄さんからしてもらったことが積み重なっていく。ありがたい気持ちと、なんだか申し訳ない気持ちも。
「コーヒーも飲みます?」
「あ、はい。ありがとうございます」
お兄さんはテキパキと朝ご飯の準備を始めた。
朝ご飯が終わって少し経てば、もう帰る時間。
お兄さんと離れる時間――。
私はそっと、小さくため息をついた。