元体操のお兄さんとキャンプ場で過ごし、筋肉と優しさに包まれた日――。
 キャンプ場に着いた。

 結構大きい駐車場だけど、週末だからかすでにほぼ満車に近い状態だった。他にも停められる場所はあるけれど、そこは少しここから遠いから、荷物を運ぶのは大変で。

 ふたり分の着替えやタオル、他にも必要なものが色々入った大きいボストンバックと、さっき買った買い物袋を持つだけで手一杯。だけど実家から借りてきたテントや、ホームセンターで先日買った寝袋ふたつとか……明らかに一回では運びきれない量がある。

 駐車場内をぐるぐるしていると、なんとか端に空いている場所を見つけた。
 近い方の駐車場に停めれて安堵し、荷物を降ろす。

 碧はいつも一緒に寝ている、お気に入りのぬいぐるみのユニコーンを自分のリュックに入れて背負っている。

「荷物持ちきれないから、もう一度駐車場に来るかな?」
「私これ持てるよ!」

 さっきスーパーで買ったものが入った袋を、碧は自ら持ってくれた。

「碧ありがとう! 助かる」

 最近は特に自分からお手伝いをしてくれる碧。ちょっと前までは赤ちゃんだったのに、いつの間にか成長して――。

 心に余裕がある時に振り返ると、いつも胸の奥からじんとしたものが込み上げてくる。

「本当にありがとう、碧」
「うん! どういたしまして」

 先にテントと寝袋を持って、テントを立ててから他の荷物を持っていくことにした。

 管理棟で受付を済ますと、ゴミは必ず持ち帰ることや、焼肉などで火を使う場合は、直接草の上ではやらずに板や防火シートを引いてくださいなど、細かく説明を受けた。説明を受けると、空いている場所を探す。

――結構混んでいるけど、テントを立てられる場所はあるのかな?

 焼肉を楽しんでいる人達や、とても大きくて立派なテントを立てて楽しんでいる団体などが目に入る。

 碧を見ると、碧の視線が一点に集中していた。視線を追うと、同じぐらいの年齢の男の子がいる家族が、楽しそうに焼肉をしている。

「碧、今度焼肉に挑戦してみよっか?」
「したい! でも、大変そうでない?」

 やっぱり日頃の行いが、気を使わせてしまっているのだろうか。

 そんなに気を使わなくていいのにとも思う。
 碧がいてくれるだけで幸せだから、碧は毎日楽しく幸せに過ごしてくれるだけでいいのに。

「大丈夫だよ。楽しそうだし、次は焼き網とかも持ってこよう」
「うん、次も来るの楽しみ!」

 少し進んでいくと、良さげな場所を見つけた。見つけた場所は、隣とも間を開けてテントを立てられそうな場所だった。

「あそこにしよっか」

 テントを立てる場所に着くと、草むらの上に荷物を置いた。そしてテントを組み立てるためのものを、テント道具が入っている袋から全て出した。
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