俺はこの幼なじみが嫌いだ
幼なじみ
「ふわぁ……」
学生の憧れである窓際最後方の席……から前へ4つ進んだ窓際最前列。
そこが俺、神月柚の席である。
あっそうそう。
この柚という名前は、母親がつけてくれた名だ。
由来はシンプルで、可愛いからだった。
小学生になったばかりの頃、この名前のせいでクラスの男子から女の子みたいだなと言われたこともあったっけ。
当時の俺にとって、女の子みたいと言われるのは結構嫌だったんだよなぁ。
だから俺は、中学生になってすぐ、金髪という要素を自分に付け加えた。
親は反対せず、俺のしたいことを尊重してくれる。
その結果、名前でバカにされることはなくなり、毎日楽しく中学校に通うことが出来た。
そして俺は今、高校1年生である。
まだまだベビーフェイスと言われることはあるが、身長は170センチくらいまで伸びた。
最近のマイブームは、長袖のカッターシャツの袖をまくって着ることと、この席で気持ちよく寝ること。
意外と日当たりがよく、心地よい睡眠へと俺を誘ってくれるこの席に、絶賛片思い中だ。
「授業つまんない」
授業中は基本頬杖を付き、中庭を見ている。
今受けている数学の授業中なんかは特に。
だって、数学苦手だし。
ようやく数学の授業が終わり、2時間目の放課がやってきた。
俺はこの10分間の短い放課が大好きだ。
短い時間ではあるが、机に突っ伏して寝るのがまぁ気持ちいい。
授業が終わった開放感を全身に感じ、俺は机に突っ伏した。
やはり、とても心地よい。
「最っ高……」
それから2分程で、寝る準備が整った。
もういつでも寝れる。
いつも身体が教えてくれる。
しかし、そんな時だった。
突然前の扉が騒がしく開き、誰かが早足で俺の元へと向かってくる。
「柚、来たよ!」
よく知る声が俺の名前を呼ぶ。
そして、その声を聞いた瞬間、男子たちの視線はその誰かに集中した。
「ん?」
俺は窓側を向いて寝ていたため、顔の向きを廊下側へと変える。
「なーんだ、柚起きてるじゃん」
目の前に立っていたのは、金髪ポニーテールの女子生徒だった。
「夢……?」
ブレザーが着てもらっているとさえ思ってしまうようなその女子生徒は、片手に毛布を持っている。
「毛布……? あっ、あゆはか」
俺は彼女をよく知っている。
彼女の名前は天乃川あゆは。
確か、『彼女を見た男子は必ず2度見してしまう』だっけ?
そんな噂が出るくらいの人気者らしい。
ただ残念なことに、俺はその感覚を味わう事ができない。
なぜなら、天乃川あゆは 改め"あゆ"は、俺の幼馴染だから。
保育園で知り合ってから今に至るまで、俺の近くにはずっとあゆがいた。
当然、親同士も仲が良い。
そんな俺とあゆは、さぞ付き合っているように見えたのだろう。
「2人って付き合ってるの?」
もう聞き飽きた質問だ。
そして、その度に俺はこう答える。
「そんなわけないだろ。あゆはただの幼馴染だよ」
もちろん、あゆはとても可愛いと思う。
でも、あゆに対して恋心を抱くことはない。
理由は簡単だ。
俺とあゆでは不釣り合いだから。
あゆが今金髪なのは、俺を1人ぼっちにしないため。
あゆが今毛布を持っているのは、この時間いつも寝ている俺に毛布をかけてあげるため。
こんなに優しさと思いやりに溢れ、男子の憧れの的であるあゆを、俺が好きになるなんておこがましいじゃないか。
だから俺は、あゆを嫌うことにした。
嫌ってしまえば、あゆに恋心を抱く可能性は無くなるから。
「あゆ、何しに来たの?」
「何って、毛布かけてあげようかなって思って」
「ふーん。
別にこの席暖かいし、毛布とかいらないから。
それで、他に用は?」
自分でも分かる。
俺は最低なことをしている。
でも、こうでもしないと俺は不器用だから。
「うーん……特にないかも! じゃあ私戻るね!
ばいばい!」
あゆはそう言うと、笑顔で戻っていった。
「ほんとクズだな……俺」
ギュッと心が締め付けられるように痛かった。
俺はこの幼なじみが嫌いだ。
いつも俺の事を第1に考えてくれる、そんな幼なじみが嫌いだ。
学生の憧れである窓際最後方の席……から前へ4つ進んだ窓際最前列。
そこが俺、神月柚の席である。
あっそうそう。
この柚という名前は、母親がつけてくれた名だ。
由来はシンプルで、可愛いからだった。
小学生になったばかりの頃、この名前のせいでクラスの男子から女の子みたいだなと言われたこともあったっけ。
当時の俺にとって、女の子みたいと言われるのは結構嫌だったんだよなぁ。
だから俺は、中学生になってすぐ、金髪という要素を自分に付け加えた。
親は反対せず、俺のしたいことを尊重してくれる。
その結果、名前でバカにされることはなくなり、毎日楽しく中学校に通うことが出来た。
そして俺は今、高校1年生である。
まだまだベビーフェイスと言われることはあるが、身長は170センチくらいまで伸びた。
最近のマイブームは、長袖のカッターシャツの袖をまくって着ることと、この席で気持ちよく寝ること。
意外と日当たりがよく、心地よい睡眠へと俺を誘ってくれるこの席に、絶賛片思い中だ。
「授業つまんない」
授業中は基本頬杖を付き、中庭を見ている。
今受けている数学の授業中なんかは特に。
だって、数学苦手だし。
ようやく数学の授業が終わり、2時間目の放課がやってきた。
俺はこの10分間の短い放課が大好きだ。
短い時間ではあるが、机に突っ伏して寝るのがまぁ気持ちいい。
授業が終わった開放感を全身に感じ、俺は机に突っ伏した。
やはり、とても心地よい。
「最っ高……」
それから2分程で、寝る準備が整った。
もういつでも寝れる。
いつも身体が教えてくれる。
しかし、そんな時だった。
突然前の扉が騒がしく開き、誰かが早足で俺の元へと向かってくる。
「柚、来たよ!」
よく知る声が俺の名前を呼ぶ。
そして、その声を聞いた瞬間、男子たちの視線はその誰かに集中した。
「ん?」
俺は窓側を向いて寝ていたため、顔の向きを廊下側へと変える。
「なーんだ、柚起きてるじゃん」
目の前に立っていたのは、金髪ポニーテールの女子生徒だった。
「夢……?」
ブレザーが着てもらっているとさえ思ってしまうようなその女子生徒は、片手に毛布を持っている。
「毛布……? あっ、あゆはか」
俺は彼女をよく知っている。
彼女の名前は天乃川あゆは。
確か、『彼女を見た男子は必ず2度見してしまう』だっけ?
そんな噂が出るくらいの人気者らしい。
ただ残念なことに、俺はその感覚を味わう事ができない。
なぜなら、天乃川あゆは 改め"あゆ"は、俺の幼馴染だから。
保育園で知り合ってから今に至るまで、俺の近くにはずっとあゆがいた。
当然、親同士も仲が良い。
そんな俺とあゆは、さぞ付き合っているように見えたのだろう。
「2人って付き合ってるの?」
もう聞き飽きた質問だ。
そして、その度に俺はこう答える。
「そんなわけないだろ。あゆはただの幼馴染だよ」
もちろん、あゆはとても可愛いと思う。
でも、あゆに対して恋心を抱くことはない。
理由は簡単だ。
俺とあゆでは不釣り合いだから。
あゆが今金髪なのは、俺を1人ぼっちにしないため。
あゆが今毛布を持っているのは、この時間いつも寝ている俺に毛布をかけてあげるため。
こんなに優しさと思いやりに溢れ、男子の憧れの的であるあゆを、俺が好きになるなんておこがましいじゃないか。
だから俺は、あゆを嫌うことにした。
嫌ってしまえば、あゆに恋心を抱く可能性は無くなるから。
「あゆ、何しに来たの?」
「何って、毛布かけてあげようかなって思って」
「ふーん。
別にこの席暖かいし、毛布とかいらないから。
それで、他に用は?」
自分でも分かる。
俺は最低なことをしている。
でも、こうでもしないと俺は不器用だから。
「うーん……特にないかも! じゃあ私戻るね!
ばいばい!」
あゆはそう言うと、笑顔で戻っていった。
「ほんとクズだな……俺」
ギュッと心が締め付けられるように痛かった。
俺はこの幼なじみが嫌いだ。
いつも俺の事を第1に考えてくれる、そんな幼なじみが嫌いだ。
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