訳あり王子の守護聖女
 目を覚ますと私はふかふかの寝台に横たわっていた。

 エレスト神殿で使っていたような、板に布を敷いただけの簡素なそれではなく、天蓋付きの立派な寝台である。

 首元までかけられた毛布は温かく、頭の下に敷かれた枕は柔らかい。

 枕の中身は羽毛だろうか。
 蕎麦殻を詰めた硬い枕とは全く違う。

 ……ここはどこ?

 レースカーテン越しに陽光が降り注ぐ豪奢な部屋の中。

 自分が一体何でこんなところにいるのか全く状況が掴めず、首を動かして右隣を見る。

 すると、寝台の傍に置かれた木製の椅子に座っている少女とばっちり目が合った。

「あっ! 目が覚めましたか!?」

 年齢は私と同い年か、少し上くらいか。
 長い栗色の髪を編み込み、黒と白のお仕着せを着たその少女は慌てたように立ち上がって私を覗き込んだ。

「お身体の具合はいかがですか? 目に見える傷は塞ぎましたが、まだどこか痛いところはありますか? 少しでも違和感があれば遠慮なく仰ってください」

 この人は誰だろうか。
 私は侍女に敬語を使われるような身分の娘ではないのだけれど。

「ええと……大丈夫です。どこも痛くありません」
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