訳あり王子の守護聖女
「うん。ルカ様のお兄様……唯一、本当の家族と言える人」

 思い出すのは、必ず無事に帰って来なさいと言ったノクス様の優しい笑顔。

 なのにどうして、ノクス様が倒れたりするの? 

 他の皆は幸せそうに笑っているのに、まるで、私たちだけが世界から切り離されて絶望のどん底へと叩き落されたような気分だった。

 ふらりとルカ様が立ち上がる。

 その手から白い球が落ちて地面を転がっていくけれど、もはや視界に入っていないようだ。

 足に力が入らないらしく、よろけそうになったルカ様の身体をとっさにラークが足を踏み出して支えた。

 私よりよほど反応が早い。
 手を出す暇もなかった。

 私は『伝言珠』を拾い上げ、モニカさんに出来る限り早く帰ることを約束して通信を切った。

「……王宮に帰る。グリフォンはどこだ」
 暗い中でもそうとわかるほど真っ青なルカ様を見て、ラークは舌打ちした。

「しっかりしろ、この村にグリフォンなんていねーよ。いま魔物の話なんかするんじゃねえ、村の連中の感情を考えろ。十人も殺されてるんだぞ?」
 ルカ様の腕を掴み、ラークが低い声で言う。
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