訳あり王子の守護聖女
「ああ――そうか、そうだったな、すまない。でも兄上が……早く帰らなければ。二日も意識が戻らないなど、何故だ? 病気なのか? いや大丈夫だ、仮に悪い病気であったとしてもステラがきっと治してくれる――」
「ルカ様。大丈夫です、仰る通り、どんな病気であっても私が治します」
 加速する混乱を止めるべく、私はルカ様の手を包むように握った。

「ノクス様は大丈夫です。私がいます」
 繰り返して、まっすぐに赤い目を見つめる。

「……そうだな。どうか、頼む」
 ルカ様の手は震えていて、その声はいまにも泣き出しそうなほどに弱々しかった。
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