訳あり王子の守護聖女

05:夜を駆ける

 ノクス様の元へ急ぎたいというのに、よりによってこんなときに王宮の『瞬きの扉』が故障した。

 不具合が起きて動力源であるオーブが機能停止したそうだが、もはや原因などどうでも良い。

 私たちは連絡を受けてから二日間、ほとんど休むことなくグリフォンを乗り継いで空を駆け、夜の闇に沈む王宮に降り立った。

 たとえ人目につきにくい夜中であったとしても、王宮の敷地内に魔物を入れるなど言語道断である。

 しかし、罰を受ける覚悟はとうにできていた。

「ルカ王子!? 王宮にグリフォンを連れ込むなど何を考えて――」

 衛兵たちの非難を無視してルカ様は私の手を掴み、『蒼玉の宮』に向かって一直線に走り出した。

 激しい振動に耐えられなくなったのか、ルカ様の外套のフードからプリムが飛び出す。

 そのまま彼女は羽根を動かし、ルカ様に寄り添うように空を飛び続けた。

 ルカ様の足が速すぎて、私はついていくのに必死だったけれど、シエナとラークは平気な顔で追いかけてきている。

 背後で二匹のグリフォンが飛び立つ羽音が聞こえた。
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