訳あり王子の守護聖女
 ガラス容器の中の魔法の光が照らすノクス様の顔には生気がなく、その色は青や白を通り越して土気色だった。

 緩やかに胸が上下しているから、かろうじて生きているのはわかるけれど、この様子ではいつ呼吸が途切れてもおかしくはない。

 寝台の前の椅子にはモニカさんが座っていた。
 驚き顔で私たちを見ていた彼女は立ち上がり、じわじわとその目に涙を浮かべた。

「ルカ様。ステラ様。よくお帰りに……そちらのお二人は? それに、ルカ様の隣にいるのは、まさか、妖精ですか?」

 モニカさんの問いかけにルカ様は答えない。
 真っ白になるほど拳を強く握り締め、チェストの上の指輪を睨んでいる。

 ルカ様がその右手に嵌めているものと対になる指輪。
 もしもノクス様がその指に嵌めていたなら、ルカ様にもっと早く生命の危機を知らせていたであろう指輪だ。

「……肝心なときに外したことを怒ったくせに……」
 怒り――あるいは悲しみに拳を震わせているルカ様に代わって、モニカさんの問いにはラークが答えた。
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