訳あり王子の守護聖女
 陽が暮れた夜。

『柘榴の宮』の主人たるルカ様は赤々と燃える暖炉の前に立ち、少々困ったような呆れたような複雑な顔で、入室するなり滑り込むように足元に跪いた私を見下ろしていた。

 借り物のドレスを汚してしまって申し訳ないが、誠心誠意謝るには相応しい姿勢をしなければならない。

 犯した罪の重さを考えれば、立ったまま謝るなど論外なのだ。

「この度は私のような下賤の命を助けてくださりありがとうございました!! ご心配とご迷惑をおかけしてほんっとうに申し訳ございませんでした!! さらにさらに、一年前は王子様とは露知らず、とんでもないご無礼を働いてしまいまして、もうなんとお詫びすれば良いのか――いえっ、もはや言い訳は無用!! 覚悟はできております!! 元よりルカ様に救われたこの命、煮るなり焼くなり、どうぞお好きにしてください!!」
 胸の前で手を組み、深々と頭を下げる。

「いや、お好きにって……ここでお前を罰したら、俺は何のために助けたんだ?」
 柔らかな絨毯に座ったまま見上げれば、ルカ様は完全な呆れ顔。
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