訳あり王子の守護聖女
「はい、ですから、どんな罰にせよ、命までは奪わないで頂けると嬉しいです!! 死んだら恩返しできなくなってしまいますので!!」
 私は再び頭を下げた。

「そんなことするわけ……。ああ、もういいから顔を上げろ。そもそも俺はお前を罰する気なんてない」
「いいえ、下民が王子に頭突きしたんです、何の罰もないなんてありえません!! もしここがエメルナ皇国だったら私の首は間違いなく飛んでいました!! どうか遠慮なく――うひゃあっ!?」
 ひょい、と猫の子でも持ち上げるように腰を掴まれた。

「ななななな何を!?」
 驚いている間にルカ様は私の身体を担いで移動し、天鵞絨《ビロード》張りの長椅子の上に置いた。

 そして、当たり前のような顔をして私の隣に座る。

「……………」
 ぱちぱちと燃える暖炉の火が並んで座る私たちを照らしている。

 私の右隣、手を伸ばせば触れられるほどの距離に座るルカ様は見惚れるほど綺麗な横顔だが、私がこの位置からじっくり王子を見ていいはずがない。

「あの……謝罪はまだ終わっていませんし、何より下民が王子と共に座るなど許されることでは――」

「うるさい」
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