訳あり王子の守護聖女
いかにも不機嫌そうに言われて、ぐっと言葉に詰まる。
「謝罪はもういいと言っただろう。この宮では俺がルールだ。俺はお前の隣に座りたいからここにいるんだ、何か文句があるのか。単純に嫌だというなら俺も考えるが――」
「いいえ、嫌なわけではありません!」
頭を振ると、ルカ様は心なしか満足そうに頷いた。
「ならいい。お前は自分を卑下しすぎだ。さっきから下民下民と何度言えば気が済むんだ。聞いていて不愉快だ。止めろ」
「……でも……事実ですから」
私は自分の左手の甲を見下ろした。
エメルナで生まれた平民の子どもは大体五歳になるまでに神殿へ行き、巫女から『祝福の紋』を左手の甲に授かるのがならわしである。
『祝福の紋』を持っていないのは下民だけだ。
だから、何もない私の左手を見ればすぐに下民だとばれてしまう。
「……アンベリスに下民という概念はない」
私を慰めるように、ルカ様は落ち着いた声音でそう言った。
その声を受けて、私は下げていた頭を上げた。
「この国にいる以上、お前はただの平民だ。わかったな?」
炎の照り返しを受けて、ルカ様の艶やかな黒髪が赤く染まっている。
「謝罪はもういいと言っただろう。この宮では俺がルールだ。俺はお前の隣に座りたいからここにいるんだ、何か文句があるのか。単純に嫌だというなら俺も考えるが――」
「いいえ、嫌なわけではありません!」
頭を振ると、ルカ様は心なしか満足そうに頷いた。
「ならいい。お前は自分を卑下しすぎだ。さっきから下民下民と何度言えば気が済むんだ。聞いていて不愉快だ。止めろ」
「……でも……事実ですから」
私は自分の左手の甲を見下ろした。
エメルナで生まれた平民の子どもは大体五歳になるまでに神殿へ行き、巫女から『祝福の紋』を左手の甲に授かるのがならわしである。
『祝福の紋』を持っていないのは下民だけだ。
だから、何もない私の左手を見ればすぐに下民だとばれてしまう。
「……アンベリスに下民という概念はない」
私を慰めるように、ルカ様は落ち着いた声音でそう言った。
その声を受けて、私は下げていた頭を上げた。
「この国にいる以上、お前はただの平民だ。わかったな?」
炎の照り返しを受けて、ルカ様の艶やかな黒髪が赤く染まっている。