訳あり王子の守護聖女
「いや、ラークの言う通りだ。頼み事はルカ自身に言わせよう。みんな、ついてきてくれ」

 ノクス様は立ち上がってサロンを出た。
 私たちもその後に続き、ルカ様が待っているはずの客室へ移動した。

「ルカ、入るよ」
 一声をかけてノクス様が開け放った客室では――

「ふわふわ! お前本当にふわふわだな! ここか? ここが気持ち良いのか?」

 キー! とソファに仰向けに寝転がっているカーバンクルが気持ち良さそうな鳴き声を上げている。

 ソファの前に跪いたルカ様は扉付近に立つ私たちに全く気付いていない様子で、カーバンクルの腹部をわしゃわしゃしながら満面の笑顔だ。

「あはははは。お前本当に可愛いなー。このまま持ち帰りたいなーでも兄上のものなんだよなー、残念だなー」

 ルカ様は突っ伏してカーバンクルに頬擦りを始めた。

「…………ッ!!」
 あまりの光景に私は顔を覆って悶絶した。

「……ご覧ください。あれが世界を滅ぼしかねない危険人物です」

「ぶふっ! ちょっと、そんな真顔で、止め――ふふっ、ふふふふふ」

 どうにか堪えようとして失敗したシエナがうずくまって笑っている。
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