訳あり王子の守護聖女
「本日は二度お召し物を変えて頂く予定です。ダンスレッスンの前、それと、ダンスレッスンの後。ステラ様におかれましては最高の状態でルカ様とお会いしたいでしょうから、私たちも全力を尽くさせていただきます」
「……よろしくお願いします」
 何も言わずとも私の恋心を見抜いている女官に、私は赤面しつつ頷いた。



 エレスト神殿は王宮の東側にある。
 管理者の宮中神官長に朝の挨拶をしてから、私は女神クラウディア像の前で跪いて祈りを捧げた。

 しばらくして部屋に戻り、栄養たっぷりの朝食を摂って一息ついたら今日の担当科目の教師が部屋を訪れ、授業が始まる。

 エメルナ皇国の下民だった私はろくに教育を受けていない。
 一応読み書きはできる。ただし字は下手で本を読む習慣もなかった。

 王子として一通り高等教育を受けていた――いうまでもなくノクス様の手配だ――ルカ様や伯爵家出身のラークや同じく伯爵家出身のシエナと比べると、私は立ち居振る舞いがまるでなっていない。

 この広い世の中で、ドレスの裾を踏んづけて階段から転がり落ちそうになる聖女がどこにいるというのか。
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