訳あり王子の守護聖女
 皆で『蒼玉の宮』を訪れた後、私はノクス様に相談を持ちかけた。

 付け焼刃のマナーと乏しい知識しか持たない状態で公務を始めたルカ様の隣に立つのは不安だ、私のせいでルカ様が恥を掻くのは耐えられない。

 そう言うと、ノクス様は私のために最高の教師陣を揃え、一か月に及ぶ『短期淑女養成計画』を立ててくれた。

 歩き方、身のこなし、礼儀作法、ダンス、刺繍、音楽、アンベリスの歴史、文化。その他諸々。

 私はルカ様の守護をラークたちに任せて『柘榴の宮』にこもり、必死で学び続けている。

「よろしい、歩き方に関しては修正するところがありません。最初はアヒルの物まねでもなさっているのかと絶望しましたが、目覚ましい進歩です」

 陽が沈み始めた夕刻。

 この日最後の先生であるダーナ伯爵夫人は銀縁の眼鏡をくいっと持ち上げた。
 いましがたミアたちがつけた部屋の照明に反射して、きらりと眼鏡が輝く。
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