訳あり王子の守護聖女
「貴族の人たちの凄さを思い知ったわ……重いドレスを着ていながら、それを全く感じさせず、笑顔で軽やかに踊るなんて。踊るならもっと動きやすい服のほうが良くないかしら? どうしてコルセットで身体を締めあげてまでドレスを着るの? 被虐趣味でもあるの?」

「美とはすなわち忍耐です、ステラ様」
 ロゼッタが淡々と言う。

「なるほどお……ごもっともです……」
 上体を傾け、ひんやりした化粧台に頬をくっつけていると、壁際でミアと遊んでいたカーバンクルが私の膝の上にぴょんと乗ってきた。

 さらに化粧台の上まで飛び上がり、私の顔を覗き込んでキューと鳴く。

 どうやら心配してくれているようだ。
 このカーバンクルには高い知性があり、人語を理解しているようなそぶりもみせる。

 ノクス様のものだったこのカーバンクルはルカ様が譲り受けた。
 ルカ様は大喜びで連れ帰り、丸一日悩みに悩んだ末に「フィオリスルーシェ」と名付けた。

 私はその言葉が何を意味するのかわからなかったけれど、ラークはすぐに「大層な名前だな」と笑った。
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