訳あり王子の守護聖女
 シエナに訊いてみると、「フィオリスルーシェ」とは「最高の幸せ」という意味の古代語らしい。

 やはり三人とは知識量が違うなと痛感した出来事だった。

「フィーはいい子ねえ」
 私は微笑んでカーバンクルを撫でた。
 フィオリスルーシェという名前は長いので、みんなフィーと縮めて呼んでいる。

「うーん、本当に素晴らしい手触り。ルカ様が夢中になるのもわかる。なんて極上のもふもふなの……」
「ハーブティーでも淹れましょうか?」
 フィーを撫で回している私を冷静な眼差しで見ながらロゼッタが尋ねてくる。

「ええ、お願い」
 陽だまりのような匂いがするフィーを堪能していると、部屋の扉がノックされた。

「ステラ様、よろしいでしょうか」
「はい、どうぞ」
 だらしない姿勢から一転、背筋を伸ばして返事をすると、声の主は部屋に入ってくることなく告げた。

「さきほどルカ様たちが王都の港に着いたと連絡が入りました」
「本当に!? ロゼッタ、ごめんなさい! ハーブティーは後で! 先に着替えを手伝ってちょうだい!」

 私は勢いよく立ち上がった。
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