訳あり王子の守護聖女
「驚いた。どこの令嬢かと思った。――ただいま」
 いつものように抱擁されるのかと思いきや、ルカ様は私の左手を取ってそこにキスを落とした。

「!?」
 予想外の行動に心臓が飛び跳ね、血が団体で頭に上っていく。

「あー。遠慮せず熱烈なキスを交わしてくれてもいいぜ? ルカが一刻も早く帰りたい、ステラとフィーに会いたいっつーから、せっかく王都を通ったのに何の店にも寄れなかったんだよ。いい加減腹減ったし、オレらは先に帰って夕食にするわ。後はどうぞごゆっくりー」

 ラークはシエナの背中を押して私の傍を通過しながら手を振った。

「な、何を言ってるのラーク。私も夕食はまだだから、仲良く皆で食べましょうそうしましょう!」
「え? お帰りのキスは口でしなくていいの?」
「しませんっ!!」
 振り返ってニヤニヤしているラークに、私は激しく動揺しながら叫んだ。




 主人の帰還を祝ってその日の夕食はいつもより贅沢だった。

 国民の血税を浪費するのを厭ってか、ルカ様が普段食べている食事は庶民と大差のない内容なのである。

「ユグレニー公国の園遊会はいかがでしたか?」
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