訳あり王子の守護聖女
バーベイン様はしばらく黙った後、ルカ様から私へと視線を移した。
「ルカの命を救ったというのは真《まこと》か」
「はい。当時はアンベリスの王子とは存じ上げませんでした。私はエメルナ皇国の巫女見習いでして、過去二年の間、ベルニカにある四国全てを回り、戦地での救助活動を行っていました。ルカ様をお助けしたのもそのときです」
「……成る程。最も過酷と言われる戦地での救助活動に二年も従事していたのは下民だからか」
私の左手を見て、バーベイン様が青い目を細めた。
「仰る通りです。私には戸籍もありません。書類上は存在しない者なのです」
「ふむ。ならば彼女をどう扱うかは扱う者次第、というわけですな。仮にこのままアンベリスで暮らしたところでエメルナ皇国が身柄の引き渡しを要求してくることもありますまい」
高座で宰相が呟いた。
「――エメルナも愚かですね。ステラの有用性に気づかず、戸籍も与えないとは」
口を挟んだのはこの国の第二王子ノクス・フィーネ・アンベリス様だ。
柔らかな太陽の光を集めて紡いだような淡い金糸の髪、その瞳はサファイア。
「ルカの命を救ったというのは真《まこと》か」
「はい。当時はアンベリスの王子とは存じ上げませんでした。私はエメルナ皇国の巫女見習いでして、過去二年の間、ベルニカにある四国全てを回り、戦地での救助活動を行っていました。ルカ様をお助けしたのもそのときです」
「……成る程。最も過酷と言われる戦地での救助活動に二年も従事していたのは下民だからか」
私の左手を見て、バーベイン様が青い目を細めた。
「仰る通りです。私には戸籍もありません。書類上は存在しない者なのです」
「ふむ。ならば彼女をどう扱うかは扱う者次第、というわけですな。仮にこのままアンベリスで暮らしたところでエメルナ皇国が身柄の引き渡しを要求してくることもありますまい」
高座で宰相が呟いた。
「――エメルナも愚かですね。ステラの有用性に気づかず、戸籍も与えないとは」
口を挟んだのはこの国の第二王子ノクス・フィーネ・アンベリス様だ。
柔らかな太陽の光を集めて紡いだような淡い金糸の髪、その瞳はサファイア。