訳あり王子の守護聖女
「いや、信じるのはまだ早い。陛下の同情を引くための嘘かもしれませんぞ」
 臣下たちの間に動揺の波が広がっている。

 表情からして、過去私が助けた騎士たちは私の言葉を素直に信じてくれているみたいだけど、バーベイン様やギムレット様、宰相は疑っているようだ。

「皇太子の婚約者となったブレア家の娘の不祥事ですか……それが真ならば一大事ですが……」
 宰相は難しい顔をして白い髭の生えた顎に手を当てた。

「ステラよ。そなたの言葉が真実である証拠はあるのか?」

 ――やっぱり、そう来るよね。

 わかってはいたけれど、出せる証拠なんてない。

「……ありません」

 手のひらを握りしめて答えると、バーベイン様は失望したような顔をした。

「……やはり信用ならない……」
「……そもそも本当にあの娘は『戦場の天使』なのか?」

 大臣たちがヒソヒソ囁いている。

「騙されているのでは……」
「第三王子が連れてきた娘だぞ……あの娘も呪われて……」

 呪いとかなんとか言っている意味はよくわからないけれど、この空気は――良くない兆候だ。

「余に根拠のない妄言を申したと?」
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