訳あり王子の守護聖女
 王太子に勧められては拒否権などあるわけがなく、迷った末に、私はクルミが入ったクッキーを手に取った。

「美味しいです」
 味のしないクッキーを咀嚼して嚥下し、微笑みを作ると、ギムレット様は満足そうに笑って私と同じクッキーを食べた。

 それからしばらくは他愛ない話が続いた。
 ギムレット様は私が戦地で体験した話を興味深そうに聞き、お返しとばかりに王宮で起きた愉快な出来事や怪談の類も教えてくれた。

 ギムレット様の話術はとても巧みで、お話しされる内容はどれも興味深いものばかりだけれど……でも、そろそろじれったい。

 お菓子に一切手を付けず、貝のように黙って動かないルカ様のことも気になるし、いい加減話を切り上げないと。

「ギムレット様。それで、私にしたいお話とは何でしょうか?」
 話の区切りがついたタイミングで私は切り出した。

 東屋にいるのは私たち四人だけ。
 女官や護衛を下がらせた以上、まさか雑談するために私を呼んだわけじゃないはずだ。
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