訳あり王子の守護聖女
「もう本題に入るのか? 私はステラともう少し会話を楽しみ、ステラを知りたいと思っていたのだが。なあルカ、ステラを私に譲ってくれないか? お前ばかり独占するのはずるいぞ」

「ステラは私の所有物ではありません。従って殿下に譲ることもできません」

 この日初めてギムレット様に話を振られたルカ様は淡々とそう答えた。
 ルカ様の前に置かれたお茶は既に冷え切っている。

「ほう。陛下はお前にステラの処遇を一任すると言っていたが、お前はステラを己の管理下に置く気はないのだな?」
「はい。私の傍に縛り付けるつもりはありません。全てステラの意思に任せます」

「言ったな」
 ギムレット様はその言葉を待っていたといわんばかりに口の端をつり上げ、改めて私に身体を向けた。

「ならば単刀直入に言おう。ステラ、私の守護聖女となって欲しい」

「守護聖女……とは、なんですか?」
 私は目をぱちくりさせた。

 聖女という単語は知っている。
 巫女姫を国の象徴とするエメルナ皇国では神力を持った女性を『巫女』というけれど、ベルニカにあるその他の三国では『聖女』と呼ぶ。
< 41 / 224 >

この作品をシェア

pagetop