訳あり王子の守護聖女
「でなければ何故ルカは兄弟の中で一人だけ黒髪なのだ? 魔物と同じ赤目なのだ? 他国に嫁いだ姉上たちは金髪だったぞ。瞳の色も私たちによく似ていた。異常なのは《《これ》》だけだ」

 ――ぶちっ。

 ルカ様を『これ』呼ばわりされたその瞬間、今度こそ我慢の糸が切れた。

「殿下。やはり私は御身をお守りする守護聖女にはなれません。残念ながら私と殿下では価値観そのものが違うようです。気分が悪いので失礼致します」

 無礼なのは承知の上で、私は立ち上がった。

 ギムレット様たちに深々と頭を下げてから、青ざめた顔で俯いているルカ様の腕を掴んで引っ張り、そのまま二人で東屋を後にする。

「ルカ様」
 東屋から十分に離れたところで立ち止まり、私は石畳の小道の上でルカ様に向き直った。

 庭園の出口、薔薇が絡んだ門の傍には見張りの兵士がいる。
 人目がある場所では迂闊なことは話せない。

「夜になったらお部屋を訪れて良いですか。二人きりでお話ししたいです。言いたいことも聞きたいこともたくさんあります」

「……。わかった」
 ルカ様は赤い目を伏せ、ため息をつくようにそう言った。




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