訳あり王子の守護聖女
 夕食と湯浴みを終え、陛下との謁見時に着た重いドレスよりは遥かに動きやすい服に着替えた私は、頃合いを見計らってルカ様の部屋を訪れた。

 勧められるまま長椅子に座り、暖炉の薪が爆ぜる音を聞く。

 部屋の照明と赤い炎によって照らされたルカ様の表情は暗く沈んでいる。

「……まず聞きたいのですが。ルカ様は陛下の御子ではないのですか?」

 部屋の空気は途方もなく重いが、ずっと黙っていても仕方ないので、私は口を開いた。

「……母上は海外の国から嫁いできた。そして、母上と共にアンベリスに来た護衛の騎士は黒髪だった」
 ルカ様の言わんとすることを察し、頭を殴られたような衝撃を受けた。

「……ルカ様は王妃が騎士との間に成した不義の子だと……?」

「……王宮の中にはそう囁く者もいる」
 憂鬱そうにルカ様は認めた。

「陛下も俺が本当に自分の子であるかどうか疑われている。俺は離宮で隠されるように育てられ、死ねとばかりに戦場に送られた」
「そう、なのですか……」

 ルカ様が王子だと知ったとき、おかしいとは思ったのだ。
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