訳あり王子の守護聖女
 だって、国の宝であるはずの王子が護衛も無しに魔物の群れと戦って、たった一人で死にかけているなんて、通常では考えられない。

 死んでも構わないと言ったのは――あれは、バーベイン様に死を望まれるほど疎まれているからなのか。

 ルカ様はバーベイン様を「陛下」と呼んでいる。
 それはきっと、父上と呼ぶなと言われているから。

 バーベイン様がルカ様に向けたゴミでも見るような冷ややかな眼差しを思い出し、私は目をきつく閉じた。

 ルカ様を疎んでいるのはバーベイン様だけではない、ギムレット様もだ。

 お茶会でのルカ様の態度を見ればギムレット様からどういう扱いを受けてきたかは予想がつく。

 ご家族の中でルカ様の味方と言えるのはノクス様だけなんだ……。

 泣きそうになり、私は指で目元を擦ってから顔を上げた。

「……呪い子、というのも……聞いて良いでしょうか」
 私はルカ様の顔色を窺いながら尋ねた。

 謁見の間で大臣たちも囁いていた言葉だ。気になる。

「魔物と同じ赤い目であること。生まれるときに母上が亡くなったこと。それらを呪いと呼ぶ者もいるが、一番の理由は俺の扱う魔法だな」
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