訳あり王子の守護聖女
 空気、大地、植物、動物――世界のあらゆるものには『魔素』と呼ばれるエネルギーが宿っている。

 その魔素を操って非現実的な事象を起こすのが魔法であり、魔法使いを魔導士という。

 大体の魔法は火・水・風・土の四つに分類されるが、優れた魔導士の中には攻撃を防ぐ障壁を展開する魔法、仮想物質を生み出す魔法など、珍しい魔法を扱う者もいる。

 伝承によれば、『魔素』は神々が与えた力だと言われている。

 エレスト神殿で聞いた伝承とはこうだ――遠い遠い昔、《大災厄》と呼ばれる天変地異があった。

 冬の寒さに耐えていた国に夏の花が咲いた。
 また、逆に、夏を迎えていた別の国の青空は吹雪により白く染まった。

 山は噴火し、川は氾濫し、世界を揺るがすほどの大地震によって生じた大地の裂け目からは正体不明の怪物――『魔物』が溢れ返った。

 人々は人間界と魔界の境が壊れたのだと嘆き、天界におわす神に救いを求めた。

 数多の祈りを受けて降臨した神々は人間界を『魔素』で満たし、人間に『魔素』を操る術を教えた。
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