訳あり王子の守護聖女
 魔法の力を手に入れた人々は地上に蔓延る幾千万もの魔物を殲滅し、傷ついた大地を修復し、豊かな自然を取り戻した。

 平和な時が長く続くと人々は神々への感謝を忘れ、我らこそが地上の覇者だと奢り高ぶった。

 身の毛がよだつような悍ましい魔法や魔導兵器を次々に生み出し、その技術を競うように殺し合い、空気を、大地を、海を穢していった。

 ――そしてついに、愚行の報いを受ける時が訪れる。

 大地に溜まった穢れは自浄能力を超えてとうとう飽和し、動植物に害を成す瘴気を噴き出した。

 瘴気に侵された動物は魔物に変貌し、瘴気に侵された人間は魔人となって人々に襲い掛かった。

 果たして、地上は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。

 人々は己の過ちを悔い、再び神に救いを求めたが、多くの神は自業自得だと切り捨てた。

 それでも、たった一柱だけ、人々を見捨てることのなかった女神がいた。

 エメルナの丘の上で捧げられた乙女エレストの祈りに応え、降臨したその女神こそがクラウディア。

 クラウディアは瘴気を浄化し、動植物や大地を癒す力を持つ己の神力を乙女や人々に分け与えた。
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