訳あり王子の守護聖女
「……俺は将来を約束された殿下とは違う。宮廷での立場も弱いから、お前に何もしてやれないぞ。俺と一緒にいると、またカエルや雑草を食べる羽目になるかもしれない。想像以上に辛い目に遭うかもしれない。それでもいいのか?」

「いいです。私は、ルカ様がいいのです」
 微笑んでから、急に不安になって私はルカ様の手を包んでいた手を離した。

「ルカ様は私が守護聖女では嫌ですか? ご迷惑ですか?」
 神力の大きさから守護聖女としては申し分ないとしても、人間的に嫌いだと言われたらどうしようもない。

「迷惑なわけがあるか」
 ルカ様は両手を伸ばして私を抱きしめた。

「――!!?」
 予想外の行動に顔がカッと熱くなる。

「むしろ俺のほうから頼みたいくらいだった。殿下がお前を欲しがるからあの場では遠慮するしかなかったが、俺はずっとお前のことが欲しかったんだ」

「そ、その言い方は何か大変な誤解を招くような気がするんですが……」
 守護聖女として、とちゃんと言って欲しい。

「覚悟しろ。俺の守護聖女になるなら、俺は戦場であろうとどこであろうとお前を連れて行く。泣き言を言っても逃がさないからな」
 私を抱く手に力がこもり、さらに強く抱きしめられた。
< 54 / 224 >

この作品をシェア

pagetop