訳あり王子の守護聖女
「のっ……望むところです!!」
 思い切ってルカ様の身体を抱き返す。

「頼もしいな。さすがは『戦場の天使』」
 耳元で小さな笑い声がする。
 ルカ様の笑い声を初めて聞いた。それも、こんな至近距離で。

「その呼び名は止めてください……」
 私は恥ずかしさに頭を下げ、ルカ様の胸に顔を埋めた。

「よく似合うと思うが?」
「……怒りますよ」
「わかった、もう言わない」
 低い声で警告すると、本当に、それきりルカ様は何も言わなくなった。

 ルカ様の体温を肌越しに感じる。

 戦場で鍛え上げられたルカ様の胸板は鋼のように固くて、強く押し付けられているとちょっと苦しい。

 女性の柔らかい身体とはまるで違う――男の人なのだ。

 当たり前のことをいまさらながら意識してしまい、私は耳まで赤くなった。

 心臓があまりに大きい音を立てているものだから、ルカ様に聞こえているのではないかと不安になる。

「……あの。も、もうそろそろいいですか?」
 異性に耐性のない私は数秒で白旗を上げたけれど。

「もう少しだけ」

 耳元で甘えるように囁かれてはもう何も言えず、私はルカ様の腕の中でカチコチに固まり、解放されるそのときをおとなしく待ったのだった。
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