訳あり王子の守護聖女

03:祈りを込めて、指輪をあなたに

 ――完全な遅刻だ。

 壮麗な王宮の廊下を歩き、会議の間の扉を開けると、その場に居並ぶ廷臣たちは一斉にこちらを見た。

 絹のカーテンから陽光が差し込む、広々とした部屋である。

 大きなテーブルには贅を尽くした最高級の椅子が並べられ、勇名を馳せる将軍や国の頭脳たる文官たちが腰かけていた。

「遅れて申し訳ありません。私に構わず話を続けてください」
 軽く頭を下げてから、上座に用意されている自分の席に着く。

 私の右隣には国王である父上が座っている。
 そして左隣――第三王子の席は今日も無人のままだ。

 この席は形式的に用意されているだけ。
 父上は私の再三の訴えにも聞く耳を持たず、国議にルカが参加することを許していない。

「ノクス王子が遅刻とは珍しいこともあるものですな。今日は雪でも降るかもしれません」

 軽口を叩いたのは議長であるアドルフ・ネルバ大公爵だ。
 金髪碧眼、髭を綺麗に整えた紳士然とした風貌。
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