訳あり王子の守護聖女
「――今日の会議は以上となりますが、質問などございますか?」
「では一つ」
 すかさず声を上げると、多くの廷臣たちは「やはりな」「またか」という顔をした。

 ルカを排斥しようとする父上たちと、どうにかルカを守ろうとする自分との対立はもう見慣れた光景なのだ。

 自分の味方をしてくれる廷臣もいるが、やはり父上や兄上の権力には敵わないため、ほとんどの廷臣は風見鶏を決め込んでいる。

「ディエン村の一件ですが、噴き上がる瘴気はバネッカまで到達する勢いだと聞きます。バネッカが瘴気に侵されるようなことがあれば、飢えた民が大挙して王都に押し寄せてくることになるでしょう。ディエン村や近隣の村からは山のような嘆願書が届いていますし、いまさらルカに視察などさせずとも危機的状況にあることは明白です。グレアム殿、いますぐに騎士団を動かすことはできないのですか。現在は第一・第二騎士団とも王都で待機中のはずです」

「無論、直ちに出撃する準備はある。陛下のご命令があれば」
 居並ぶ臣下の中で最も筋骨隆々の大男――騎士団長グレアムは傷跡の残る唇を動かし、低い声でそう告げた。

「陛下。どうかご決断を」
< 58 / 224 >

この作品をシェア

pagetop