訳あり王子の守護聖女
「………、………」
 彼は何か言いたげに口を開閉したが、全力疾走してきたせいで言葉が出ないらしく、額に汗を滲ませて苦しげに呼吸をしている。

 彼の右手の中指には私が持っている指輪と同じ指輪があり、魔石の中で光が明滅していた。

 どうやら彼と私の指輪は対になっていて、片方に異変が生じるともう片方に知らせる仕組みになっているようだ。

 ということは、さっき伸びた光の線はルカが持ってる魔石と繋がってたのかな?

 じゃないと、一直線に私を目指して来るなんて無理だよね。

 彼は一体どこから駆けつけてきてくれたんだろう。
 こんな、傷だらけになってまで。

「………………」
 胸の奥がじいんと熱くなった。

 信じていた人に裏切られ、殺されかけたことで酷く傷ついた心に、彼の優しさが染みわたって、泣きたくなってしまう。

 あまり幸福とは言えない人生だったけど、ルカと出会えたんだからそう悪くなかったかも。

「……ルカ。私――」
 掠れた声で呼び掛け、手を伸ばそうとした瞬間、なんとか保っていた体勢が崩れた。

 ルカは倒れかけた私の身体を急いで抱きとめ、なんだか泣きそうな顔をした。
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