訳あり王子の守護聖女
 ――ああ、なんて綺麗な光景だろう。

 私を抱く彼の頭上には光り輝く満月があり、夜風に木々が揺れている。

 うん、最後に見る光景としては悪くない。
 むしろ最高だ。
 女神様ありがとう、感謝します。

「おい、しっかりしろ!」
 目を閉じた私の頬に手を当て、切羽詰まった声でルカが言う。

「聞い、て……」

 ルカの腕の中で私は声を絞り出した。

 ルカが息を詰め、私の口元に顔を近づける気配がする。

 もう何も見えないけれど、彼の息遣いを至近距離に感じる。

「……国宝級の、美形に、看取ってもらえて……私の人生……一片たりとも、悔いはないわ」

 残っていた力の全てを振り絞り、私は口角を持ち上げて微笑んだ。

「……。遺言がそれか……お前は死にかけてても相変わらずだな……」

 呆れ声が降ってきた。

 あれ、なんで呆れてるの――なんて思いながら、私の意識はそこでぷっつりと途切れた。
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