訳あり王子の守護聖女

04:瘴気に包まれた村で

 セントセレナまで私たちを迎えに来てくれたのはディエン村の自警団の青年だった。

 明るい栗色の髪と同じ色の目をした青年は村長の息子で、名前はアルバートさん。

 穏やかな物腰の彼から詳しい説明を受けながら、ルカ様と大きなグリフォンに乗って空を飛ぶこと約一時間。

 ようやく着いたディエン村は赤黒い霧に覆われていた。

 俯瞰したからわかるのだが、薄気味悪い瘴気に覆われているのはこの村だけではなく、隣のローカス村もだ。

 二つの村の周囲に広がる草原も赤黒い霧に飲み込まれ、酷いところは草木が枯れ果てて何もない荒野と化してしまっていた。

 派遣された西と南の聖女二人の働きによるものだろう、幸い村の中での霧の密度はそう濃くはない。

 これなら護符がなくとも生身で数時間は持ちそうだ――とはいえ、数時間後には頭痛、眩暈といった『瘴気病』の初期症状が出るだろうから油断は禁物である。

『瘴気病』はその名の通り瘴気に侵された人間に生じる症状だ。

 最初は軽い眩暈や頭痛から始まり、徐々に嘔吐、昏睡といった重い症状に変わる。
< 94 / 224 >

この作品をシェア

pagetop