訳あり王子の守護聖女
 柄に青い魔石が象嵌された美しい意匠の剣だ。
 魔力を帯びている証拠に、抜き身の刃は仄かに青く発光していた。

「大丈夫か?」
 油断なく剣を握り、魔物を見つめたまま、ルカ様が私に声をかけた。

 切断面から緑の体液を垂れ流しながらも、魔物は多数の足を動かし続けている。
 恐ろしい生命力だ。

「は、はい。ありがとうございます……」
 急な出来事に心臓がバクバク鳴っている。

 もしもルカ様がいなかったらどうなっていたことか――想像だけで寒気がする。
 いまさらながら足が震え、私は両手を強く握った。

「やっと死んだか」
 ルカ様は剣を収め、それから青ざめて震えている私に気づいた。
 少し考えるような顔をした後、私の手をそっとその手で包む。

「え、……あの」
「震えが止まるまで」
 意外なほど優しい声で言われて、私は緊張を解いた。

 私はルカ様の守護聖女であって、本来ルカ様を守るべき立場だというのに、全く情けない話だ。
 でも、いまは彼の優しさに縋っていたくて、私は彼の手を握り返した。
< 97 / 224 >

この作品をシェア

pagetop