彼に溺愛され今日も甘い夜をすごします
「おかえり」
「た、ただいま……?」

仕事終わりの土曜の夜。
もらったばかりの合鍵で、帰りは恋人の部屋を訪れた。

優しい笑顔の彼に出迎えられ『おかえり』だなんて言われると、まるで一緒に暮らしているかのような錯覚を覚える。

照れてしまって『ただいま』という簡単なセリフもぎこちなくなってしまった。


「土曜まで仕事、お疲れ様」


そう言って彼——水島秋(みずしまあき)くんは玄関のドアが閉まると同時に私をぎゅうっと抱きしめる。

後頭部をよしよしされるように撫でられると、さっきまでぐったりするほど疲れていたのがどこかへ飛んでいく気がした。


(もも)ちゃん冷えてる……帰り寒かった?お風呂入る?すぐ入れるけど。ごはん先のほうがいい?」


至れり尽くせりとはこのことだろうか。

どちらも捨てがたいけれどお風呂を選択すると、ふかふかのバスタオルとパジャマが秒で用意された。

荷物とコートも当たり前のように受け取った秋くんが私を浴室まで見送る。


「一緒に入ろうか?」
「え!?」


彼のいたずらな誘いに私がびっくりしてあわてると、まるでそんなリアクションを期待してたみたいに優しく笑って「残念。じゃあ、それはまた今度にする」と言いながら脱衣所の扉をゆっくり閉めた。
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