美男子戦隊イケメンジャー!(上)
 「この少女漫画に描いてた。男に『おいで』とか言われて主人公が胸に飛び込んでるシーン」


 呆然としていた私をバカにするように、ナオは意地悪な笑みを浮かべてさっきベッドに置いた漫画を私の目の前に持ち上げた。

 その漫画は溺愛ものの話で確かに途中で何度か『おいで』と主人公を呼ぶシーンがある。


 「どういう意味?」
 「いや。これをリアルでやったらどうなるのかな?と思って。実験?」
 「な、何それ……」
 「現実ナメるなよ、と思ってたけど。本当に来るもんなんだね」


 やーい。引っかかった!と言わんばかりにナオは私にそう言って唇の端を釣り上げた。

 本当の本当に意地悪な顔だ。

 私のときめきを返してよっ。


 「酷いっ!!騙したの!?」
 「別に。カンナの真似をしただけだし」
 「はい?真似?」
 「今どき少女漫画を参考にするヤツも珍しいよね。どうせ涙目で謝れば許して貰えると思ったんでしょ?」
 「うっ。す、鋭い……」
 「甘いわ」


 自信満々に言い、ナオは心の底から楽しそうにケラケラと笑う。

 ナオが笑う所為で私の体も小刻みに揺れてるし。

< 20 / 29 >

この作品をシェア

pagetop