転生聖職者の楽しい過ごし方
第51話 束の間の安息
「やっとアーダプルですね。」
エシタリシテソージャの王都を出てから六日目。国境を越え、プリズマーティッシュに戻ってきた。行きの時と同じく、急に魔力の戻ったアナスタシアたちはまた、乗り物酔いの様な症状が出でいる。
「ごめんね、皆が辛いのわかってるけど、こんな時は魔術で治せるのかわからなくて。ちゃんと調べてくれば良かった…。」
「いいえ。大丈夫です。我々のせいで足止めをしてしまい逆に申し訳ありません。」
「それは、気にしないで。ゆっくり休んでね。」
エシタリシテソージャとの生活の違いは、自分が思っていたよりも遥かに負担だったのだと、プリズマーティッシュに戻ってきた安心感が物語る。王宮にはまだ距離があるが、越境しただけで心が安らいでいた。
「騎士の皆さんには色々と心を砕かせてしまったけど、あともう少しで帰れるから、もう一頑張りしましょう。」
「はい。」
騎士たちは元気に答える。
「元気な人はご飯食べちゃいましょ。」
∴∵
国境を越えてから三日目、ロンテに着いた。ここでは、行きに治療出来なかった人のために簡易治療所を開くことになっていた。
「リオ様、おかえりなさいませ。」
随分と久しぶりで懐かしい顔があった。
「ジョルジュ、出迎えありがとう。」
「お元気そうなお顔を拝見できて、安心いたしました。」
「私もジョルジュの顔を見られて本当にうれしい(一時は本当に帰れない危険性があったからね)。土産話は日を改めてゆっくりしましょ。」
「そうですね。今日はひとまずお宿でゆっくりなさってください。」
「ありがとう。」
「ロベール様とシド様も既にお着きになっています。」
「お二人とも来ているの?こんなに遠くに?」
「はい。リオ様のお顔を早く見たいと仰って。」
「私の顔なんて何も特別ではないのにね。」
皆の優しさが里桜には染み渡るようだった。
∴∵
「では、リオ様のお力はあの国でもお使いになれるのですか?」
「そうみたいなの。私の力は精霊の加護ではなく、神の加護だからみたい。」
舞踏会の夜、ベッドへ入ると‘神’が話しかけてきた。随分と王太子に立腹している様子だったが、王太子だけ一ヶ月の間、使う椅子かテーブルのどちらかがガタガタして安定しない呪いをかけてもらって話が付いた。
その時、聞いたのが、私の魔力は精霊ではなく神の加護による力で、この世界ならば、どの国にいても洗礼せずに力を使えるという話だった。
「でも、何事もなくお帰り頂けて本当に良かったです。」
里桜は笑ってワインを飲んだ。ウルバーノ王太子との一件はあの場にいた者たちだけの心に留めてもらうことにした。巡り巡ってレオナールの耳に入れば、折角収まった問題を再燃しかねないと、アナスタシアもその事に同意してくれた。
しかし、あの国の魔力に対する思いは何だか異常の様な気がした。
実際、この力が使えたことでエシタリシテソージャでの里桜の立場は保たれる事になったのだが、手のひら返したように変わった態度に今でも感情のやり場に困る。
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[転生聖職者の楽しい過ごし方]
読んで頂き、ありがとうございます。
閑話集
シャルル王
アデライト王妃―カッコウの鳴き声―
の2話更新しました。
よろしければご覧頂ければと思います。
赤井タ子ーAkai・Takoー
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エシタリシテソージャの王都を出てから六日目。国境を越え、プリズマーティッシュに戻ってきた。行きの時と同じく、急に魔力の戻ったアナスタシアたちはまた、乗り物酔いの様な症状が出でいる。
「ごめんね、皆が辛いのわかってるけど、こんな時は魔術で治せるのかわからなくて。ちゃんと調べてくれば良かった…。」
「いいえ。大丈夫です。我々のせいで足止めをしてしまい逆に申し訳ありません。」
「それは、気にしないで。ゆっくり休んでね。」
エシタリシテソージャとの生活の違いは、自分が思っていたよりも遥かに負担だったのだと、プリズマーティッシュに戻ってきた安心感が物語る。王宮にはまだ距離があるが、越境しただけで心が安らいでいた。
「騎士の皆さんには色々と心を砕かせてしまったけど、あともう少しで帰れるから、もう一頑張りしましょう。」
「はい。」
騎士たちは元気に答える。
「元気な人はご飯食べちゃいましょ。」
∴∵
国境を越えてから三日目、ロンテに着いた。ここでは、行きに治療出来なかった人のために簡易治療所を開くことになっていた。
「リオ様、おかえりなさいませ。」
随分と久しぶりで懐かしい顔があった。
「ジョルジュ、出迎えありがとう。」
「お元気そうなお顔を拝見できて、安心いたしました。」
「私もジョルジュの顔を見られて本当にうれしい(一時は本当に帰れない危険性があったからね)。土産話は日を改めてゆっくりしましょ。」
「そうですね。今日はひとまずお宿でゆっくりなさってください。」
「ありがとう。」
「ロベール様とシド様も既にお着きになっています。」
「お二人とも来ているの?こんなに遠くに?」
「はい。リオ様のお顔を早く見たいと仰って。」
「私の顔なんて何も特別ではないのにね。」
皆の優しさが里桜には染み渡るようだった。
∴∵
「では、リオ様のお力はあの国でもお使いになれるのですか?」
「そうみたいなの。私の力は精霊の加護ではなく、神の加護だからみたい。」
舞踏会の夜、ベッドへ入ると‘神’が話しかけてきた。随分と王太子に立腹している様子だったが、王太子だけ一ヶ月の間、使う椅子かテーブルのどちらかがガタガタして安定しない呪いをかけてもらって話が付いた。
その時、聞いたのが、私の魔力は精霊ではなく神の加護による力で、この世界ならば、どの国にいても洗礼せずに力を使えるという話だった。
「でも、何事もなくお帰り頂けて本当に良かったです。」
里桜は笑ってワインを飲んだ。ウルバーノ王太子との一件はあの場にいた者たちだけの心に留めてもらうことにした。巡り巡ってレオナールの耳に入れば、折角収まった問題を再燃しかねないと、アナスタシアもその事に同意してくれた。
しかし、あの国の魔力に対する思いは何だか異常の様な気がした。
実際、この力が使えたことでエシタリシテソージャでの里桜の立場は保たれる事になったのだが、手のひら返したように変わった態度に今でも感情のやり場に困る。
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