転生聖職者の楽しい過ごし方

第67話 結婚の儀

 朝、珍しく王宮は慌ただしかった。
 有力な貴族令嬢との縁談を断り続け、長く正妃を娶らずにいた王がやっと正妃を迎えると言うのだ。みな、気合いが入っている。
 里桜が通された支度用の客間には、レオナールがこの日のために作らせていた豪華なウェディングドレスが掛けられている。ドレスの好みなど聞かれなかったが、里桜好みのドレスだった。

「リナとアナスタシアが助言してくれたの?ドレスとても好み。」
「陛下よりご相談がありましたので。」
「ありがとう。二人とも。」
「髪型を整えましょう。」
「えぇ。お願い。」


∴∵


 レオナールは、騎士の特別儀礼服に着替え、落ち着かない様子でいた。

「陛下。どの時代も、花嫁の姿を式前に見るのはマナー違反ですよ。」
「顔だけ、元気にしているか、準備に抜かりがないかを確認したいだけだ。」
「ですから、先ほど侍女を向わせて、恙無く進んでいると、ドレスのデザインを大変喜んでいる様子だったと聞いたではありませんか。」

 アルチュールは呆れた様子で言う。

「結局だ、結局。婚約が成立して舞踏会で一度、出迎えの時に一度。婚約して丸一年で二度しか会えないとは…これを婚約者と呼ぶのか?」
「もう、今日は結婚式なのですから良いではないですか。それとも、一年で二度しか会えなかったと言う理由で婚約不履行にして、式を取りやめますか?」
「結婚するに決まっているだろう。ただ、少しくらいは顔を見せてもらえないかと…」
「まだ、お着替え中です。」

 にべも無く断わられ、レオナールはため息を吐いた。


∴∵


「リオ様、髪型を整えましたが、お着替え前に軽食をお召し下さい。本日は長丁場ですから。」
「ありがとう。リナ。」
「いいえ。初めてリオ様とお会いした時、この様になるとは思いませんでしたが、何故か私はこの方が私が一生お仕えする方なのだと思ったのです。良く生涯の伴侶に出会った女性がその様に言いますが、私はその感覚をリオ様に覚えました。」
「私は、凄い美人だなって思った。」
「ふふふ。ありがとうございます。リオ様、改めまして、本日はおめでとうございます。この先もリオ様に誠心誠意お仕え致す所存です。」
「ありがとう。リナ、これからも宜しくね。」
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