転生聖職者の楽しい過ごし方
第68話 新生活
朝、目覚めると久しぶりに人の温もりと息づかいを感じた。目を開けると、すぐ目の前には、レオナールがいた。レオナールの左腕は里桜に腕枕をしながら背中に、右腕も里桜の腰の辺りにあって、しっかりと里桜を掴まえている。里桜は、寝返りが出来ないでいた。少しずつ体を反転させようとするが、その度レオナールに戻されてしまう。
そんなことを幾度かしていると、レオナールがついに吹き出した。
「陛下、おはようございます。起こしてしまいましたか?」
「いやっ、起きていた。」
「いつからですか?」
「八時の鐘が鳴った頃か。」
「えっ?今何時なのですか?誰も起こしに来なかったのでしょうか。」
里桜は身を起こそうとするが、レオナールがそれを阻む。
「こちらから声を掛けない限り、夫婦の寝室には誰も起こしには来ない。そういうものだ。」
「陛下、お仕事は?もう遅刻ではありませんか…侍女に声を掛けますか?」
「今日から三日の休みをもらった。」
「三日もですか?」
「リオと婚約をしてから二度しか会えていない。しかも、一度は出迎えのちょっとした時間だ。やっと一緒になれた。三日くらい休んでも誰も怒りはしない。」
里桜は何かを諦めた様にレオナールの腕の中で脱力した。
「とは言え、さすがに起きないと。」
「いいや。まだ大丈夫だ。何時に寝たと思ってる。貴族は夜会など楽しんだ後は昼くらいまで寝ているものだ。だから…もう少し。」
∴∵
「陛下。おはようございます。」
長くレオナールの侍女をしているデボラは慣れた調子でレオナールにガウンをかける。
「おはよう。食事の支度を頼む。あと王妃は…まだちょっと…その…もう少し休ませてやってくれ。…すまん。」
母親と変らない年の侍女相手に何を謝っているのだと自嘲する。
居室へ戻り、身なりを整え始めた。
∴∵
ゴーン、ゴーン、ゴンゴン。と鐘の音がした。里桜はベッドの中で微睡みながらその音を聞いて勢いよく起き上がった。長い鐘の音が二回と短い鐘の音が二回は十二時の鐘だ。しかも、隣にレオナールは既にいない。
初日からこんな寝過ごすなんて…。
急いでサイドボードのベルを鳴らそうとしたところで、自分がナイトドレスを着ていないことに気が付き、ベッドの足元を探る。
里桜は、髪を手ぐしで簡単に整え、息も整えてから、ベルを鳴らす。昨日の夜にも世話をしてくれたマノンがやって来た。手水鉢と水差しに入った水を持って来ている。
里桜が、ガウンを羽織って自分の居部屋に入ると、そこにはレオナールがいた。
「陛下。」
「すまない。こちらに通してもらった。」
「それは、構いませんが。」
「あれは?」
レオナールの指す先には、手折られたアーモンドの枝が花瓶に入っている。それを見て里桜は微笑む。
「前にも申しましたが、陛下から頂いたお心は私の一部なのです。陛下から頂いた‘真心の愛’と‘永久の優しさ’は枯らしてしまうことが出来ませんでした。着替えて参りますので、もう少しお待ちください。」
里桜は寝癖で少しハネているレオナールの髪を愛おしそうに撫でてから、マノンと共に化粧室へ消えた。
そんなことを幾度かしていると、レオナールがついに吹き出した。
「陛下、おはようございます。起こしてしまいましたか?」
「いやっ、起きていた。」
「いつからですか?」
「八時の鐘が鳴った頃か。」
「えっ?今何時なのですか?誰も起こしに来なかったのでしょうか。」
里桜は身を起こそうとするが、レオナールがそれを阻む。
「こちらから声を掛けない限り、夫婦の寝室には誰も起こしには来ない。そういうものだ。」
「陛下、お仕事は?もう遅刻ではありませんか…侍女に声を掛けますか?」
「今日から三日の休みをもらった。」
「三日もですか?」
「リオと婚約をしてから二度しか会えていない。しかも、一度は出迎えのちょっとした時間だ。やっと一緒になれた。三日くらい休んでも誰も怒りはしない。」
里桜は何かを諦めた様にレオナールの腕の中で脱力した。
「とは言え、さすがに起きないと。」
「いいや。まだ大丈夫だ。何時に寝たと思ってる。貴族は夜会など楽しんだ後は昼くらいまで寝ているものだ。だから…もう少し。」
∴∵
「陛下。おはようございます。」
長くレオナールの侍女をしているデボラは慣れた調子でレオナールにガウンをかける。
「おはよう。食事の支度を頼む。あと王妃は…まだちょっと…その…もう少し休ませてやってくれ。…すまん。」
母親と変らない年の侍女相手に何を謝っているのだと自嘲する。
居室へ戻り、身なりを整え始めた。
∴∵
ゴーン、ゴーン、ゴンゴン。と鐘の音がした。里桜はベッドの中で微睡みながらその音を聞いて勢いよく起き上がった。長い鐘の音が二回と短い鐘の音が二回は十二時の鐘だ。しかも、隣にレオナールは既にいない。
初日からこんな寝過ごすなんて…。
急いでサイドボードのベルを鳴らそうとしたところで、自分がナイトドレスを着ていないことに気が付き、ベッドの足元を探る。
里桜は、髪を手ぐしで簡単に整え、息も整えてから、ベルを鳴らす。昨日の夜にも世話をしてくれたマノンがやって来た。手水鉢と水差しに入った水を持って来ている。
里桜が、ガウンを羽織って自分の居部屋に入ると、そこにはレオナールがいた。
「陛下。」
「すまない。こちらに通してもらった。」
「それは、構いませんが。」
「あれは?」
レオナールの指す先には、手折られたアーモンドの枝が花瓶に入っている。それを見て里桜は微笑む。
「前にも申しましたが、陛下から頂いたお心は私の一部なのです。陛下から頂いた‘真心の愛’と‘永久の優しさ’は枯らしてしまうことが出来ませんでした。着替えて参りますので、もう少しお待ちください。」
里桜は寝癖で少しハネているレオナールの髪を愛おしそうに撫でてから、マノンと共に化粧室へ消えた。