転生聖職者の楽しい過ごし方
王宮から馬車で西へ一時間程度走った所に、御料農場のあるランズバンの街がある。里桜とレオナールは同じ馬車に乗って街へ入った。
「この街へ入ってから急に農地が増えましたね。」
「この街の野菜は王都で人気なんだ。」
王室に献上される農作物と同じ土壌で育てられた野菜はブランド化されていて、貴族たちの人気を得ている。その為にここは、町のほとんどが農地になっている。
「街に名産があるのは良いことですね。だから、人も多く活気が感じられるのですね。」
「身支度用に小さな宿の部屋を取っている。そこで準備をして、式場になっている御料農場へ行くことになる。」
「はい。」
∴∵
身支度を調えたレオナールと里桜は別々の馬車で御料牧場まで行く事になった。
里桜が王妃の馬車で農場へ着くと、すでに祭事の準備は出来ていた。先に着いていたレオナールが、里桜に手を差し出す。
レオナールの愛妻家の噂は宮中だけに留まらず、巷にも広がり始めていて、レオナールがあまりにも幸せそうに里桜をエスコートするので、里桜は見物人の若い娘たちの羨望の的となった。
少し進んだ所に、レオナールの天馬と翔がいた。いつもと違う環境だからなのか、些か二頭とも落ち着きがない。用意された席に二人が着席すると、式典が始まった。
始めは、地元の農民たちによる収穫の祝いだ。これは、老若男女が伝統衣装に身を包み、木管楽器や太鼓などで音楽を奏でる。この国の豊穣の女神は賑やかな事が好きだと伝えられていて、子供も大人も音楽に合わせ豊作を言祝いで歌い、踊る。
初めて参加した里桜は、その姿を本当に楽しそうに手拍子などをしながら見ている。その姿を見た農民や見物人たちも同じように手拍子を始める。
「収穫祭であのように楽しそうにする王妃は初めて見た。」
「前の王妃様はいつも無表情で、最初は何かこちらに不手際があったのかと思っていたが、毎年無表情だから、ただ祭りがつまらないだけだと気が付いたが…あの王妃様は本当に楽しそうにしているな。」
「あの王妃様は天馬に乗って自らで魔獣討伐に出かけられることもあるそうだ。」
「それは頼もしい。」
「あんな王妃様なのだから、この国はこれからもっと平和になるんだろうな。」
∴∵
里桜が供物を捧げる次第になり、席を離れて天馬たちに近づくと翔もゆっくりと里桜に近づいてきて鼻先を下にした。
「あんなに天馬が懐いている様子なんて見たことがなかったわ。」
「前の王妃様の時は、天馬が近くに来るように厩務員が連れてきたりしていたものね。」
里桜は優しく鼻筋を撫でてやる。そのうち、レオナールの天馬もゆっくりと里桜に近づいてきた。そして同じように鼻先を下にして待っている。里桜は、その天馬も同じように優しく撫でる。
天馬番の男性が布の掛けられた木桶を里桜に渡す。里桜がそれを受け取ると、男性は布を取る。木桶には食べやすい様に切られた野菜や果物が入っている。カボチャ、ブドウに梨…ねぎ。
「ごめんなさい。ちょっと待って。」
里桜に突然話しかけられた男性はその場に立ち止まり、顔を伏せたままで振り向く。
「桶にネギが入っているんだけど、天馬はネギを食べても大丈夫なの?ネギがダメな動物って多いでしょう?」
男性は桶をじっくりと見て、
「はい。申訳ございません。すぐに取り替えて参ります。」
事情が分からない見物人は、ざわつき始める。しばらくして、天馬番が新しい木桶を持って来て無事に祭事は終わった。
「この街へ入ってから急に農地が増えましたね。」
「この街の野菜は王都で人気なんだ。」
王室に献上される農作物と同じ土壌で育てられた野菜はブランド化されていて、貴族たちの人気を得ている。その為にここは、町のほとんどが農地になっている。
「街に名産があるのは良いことですね。だから、人も多く活気が感じられるのですね。」
「身支度用に小さな宿の部屋を取っている。そこで準備をして、式場になっている御料農場へ行くことになる。」
「はい。」
∴∵
身支度を調えたレオナールと里桜は別々の馬車で御料牧場まで行く事になった。
里桜が王妃の馬車で農場へ着くと、すでに祭事の準備は出来ていた。先に着いていたレオナールが、里桜に手を差し出す。
レオナールの愛妻家の噂は宮中だけに留まらず、巷にも広がり始めていて、レオナールがあまりにも幸せそうに里桜をエスコートするので、里桜は見物人の若い娘たちの羨望の的となった。
少し進んだ所に、レオナールの天馬と翔がいた。いつもと違う環境だからなのか、些か二頭とも落ち着きがない。用意された席に二人が着席すると、式典が始まった。
始めは、地元の農民たちによる収穫の祝いだ。これは、老若男女が伝統衣装に身を包み、木管楽器や太鼓などで音楽を奏でる。この国の豊穣の女神は賑やかな事が好きだと伝えられていて、子供も大人も音楽に合わせ豊作を言祝いで歌い、踊る。
初めて参加した里桜は、その姿を本当に楽しそうに手拍子などをしながら見ている。その姿を見た農民や見物人たちも同じように手拍子を始める。
「収穫祭であのように楽しそうにする王妃は初めて見た。」
「前の王妃様はいつも無表情で、最初は何かこちらに不手際があったのかと思っていたが、毎年無表情だから、ただ祭りがつまらないだけだと気が付いたが…あの王妃様は本当に楽しそうにしているな。」
「あの王妃様は天馬に乗って自らで魔獣討伐に出かけられることもあるそうだ。」
「それは頼もしい。」
「あんな王妃様なのだから、この国はこれからもっと平和になるんだろうな。」
∴∵
里桜が供物を捧げる次第になり、席を離れて天馬たちに近づくと翔もゆっくりと里桜に近づいてきて鼻先を下にした。
「あんなに天馬が懐いている様子なんて見たことがなかったわ。」
「前の王妃様の時は、天馬が近くに来るように厩務員が連れてきたりしていたものね。」
里桜は優しく鼻筋を撫でてやる。そのうち、レオナールの天馬もゆっくりと里桜に近づいてきた。そして同じように鼻先を下にして待っている。里桜は、その天馬も同じように優しく撫でる。
天馬番の男性が布の掛けられた木桶を里桜に渡す。里桜がそれを受け取ると、男性は布を取る。木桶には食べやすい様に切られた野菜や果物が入っている。カボチャ、ブドウに梨…ねぎ。
「ごめんなさい。ちょっと待って。」
里桜に突然話しかけられた男性はその場に立ち止まり、顔を伏せたままで振り向く。
「桶にネギが入っているんだけど、天馬はネギを食べても大丈夫なの?ネギがダメな動物って多いでしょう?」
男性は桶をじっくりと見て、
「はい。申訳ございません。すぐに取り替えて参ります。」
事情が分からない見物人は、ざわつき始める。しばらくして、天馬番が新しい木桶を持って来て無事に祭事は終わった。