転生聖職者の楽しい過ごし方
十月の終りに里桜の懐妊が発表され、十一月に祝いの宴が開かれた。楽団などを呼んで始終賑やかに宴は催されたが、その席にベルナルダとフェルナンの姿はなかった。
「陛下。」
「何だ?具合が悪くなったか?」
「いいえ。違います。フェルナンは元気にしていますか?」
「ベルナルダのところにいるが、やはり前ほどには…。」
「そうですか。去年の十月はテレーズのお披露目会で可愛らしい姿を見せていたのに…。」
里桜もたまにそれと気付かれないように様子を探る使いを出しているが、とても活発で、明るかった様子は、今は一変して自室に籠もりきりになっていると聞いていた。
「母親の幽閉や、妹との別れは小さな子には負担が大きかったのですね。陛下。私のことを気に掛けて下さるのも大変有り難いですけれど、今はフェルナンのこと支えてあげて下さいね。正直、生まれてくるこの子はあと二、三年は出来事を覚えていないでしょうから。今はフェルナンを大切にしてあげて下さい。」
レオナールは、小さく返事をして里桜の手の甲へ口づけをした。
∴∵
レオナールはその日、久し振りに夕刻にベルナルダのところへ訪れ、ベルナルダとフェルナンと三人で夕食を食べた。
「不便なことなどないか?フェルナン。」
「はい。父上。」
「剣の稽古は進んでいるか?」
「最近は、やっていません。」
「どうした。怪我でもしたのか?ならば、神殿の尊者を呼ぶか?」
「いいえ。怪我はしていません。」
元気はないが、レオナールの方をしっかりと見据えて答える姿に、少し安堵する。
「ならば、良いが。剣術が一番好きだと言っていただろう?」
そこに、ベルナルダが優しく笑いながら話し出した。
「陛下。フェルナン王子は今、国の歴史について学ぶのが楽しいようなのです。子供の好奇心は色々な方向へ行ったりなさいますから、そのうちまた剣術も興味を持たれる日も来るのではないでしょうか。」
「あぁ。そうだな。私は子供の頃など、勉強せずにジルベールを追いかけていたが、フェルナンが私より賢い子に育ってくれたようでうれしい。」
レオナールがフェルナンに笑いかけると、フェルナンもはにかむような表情をした。
「王妃様のお産みになるお子様が、王子様であればそのうち剣を交えるようになり、王女様ならご本を読んで下さる頼もしい兄上になるのだと思います。陛下もお幸せでございますね。」
ベルナルダは、再び優しく微笑んだ。
「あぁ。」
フェルナンは、二人の会話を聞きながら黙々と食事を済ませた。
∴∵
夜、レオナールは寝所に入って今日の事を里桜に話していた。
「そうですか、歴史の勉強を。でも、少し安心致しました。何にも興味が湧かず、部屋に閉じ籠もっている訳ではなくて。」
「そうだな。」
「いつか、心の傷が癒えたら、この子とも共に遊んでくれるでしょうか。」
「そんな日が来れば良いな。」
「えぇ。しばらく私は表立ってフェルナンと関わりを持たない方が良いのでしょうが、いつかは私を含めみんなで明るく過ごせる日が来れば良いなと思います。」
「陛下。」
「何だ?具合が悪くなったか?」
「いいえ。違います。フェルナンは元気にしていますか?」
「ベルナルダのところにいるが、やはり前ほどには…。」
「そうですか。去年の十月はテレーズのお披露目会で可愛らしい姿を見せていたのに…。」
里桜もたまにそれと気付かれないように様子を探る使いを出しているが、とても活発で、明るかった様子は、今は一変して自室に籠もりきりになっていると聞いていた。
「母親の幽閉や、妹との別れは小さな子には負担が大きかったのですね。陛下。私のことを気に掛けて下さるのも大変有り難いですけれど、今はフェルナンのこと支えてあげて下さいね。正直、生まれてくるこの子はあと二、三年は出来事を覚えていないでしょうから。今はフェルナンを大切にしてあげて下さい。」
レオナールは、小さく返事をして里桜の手の甲へ口づけをした。
∴∵
レオナールはその日、久し振りに夕刻にベルナルダのところへ訪れ、ベルナルダとフェルナンと三人で夕食を食べた。
「不便なことなどないか?フェルナン。」
「はい。父上。」
「剣の稽古は進んでいるか?」
「最近は、やっていません。」
「どうした。怪我でもしたのか?ならば、神殿の尊者を呼ぶか?」
「いいえ。怪我はしていません。」
元気はないが、レオナールの方をしっかりと見据えて答える姿に、少し安堵する。
「ならば、良いが。剣術が一番好きだと言っていただろう?」
そこに、ベルナルダが優しく笑いながら話し出した。
「陛下。フェルナン王子は今、国の歴史について学ぶのが楽しいようなのです。子供の好奇心は色々な方向へ行ったりなさいますから、そのうちまた剣術も興味を持たれる日も来るのではないでしょうか。」
「あぁ。そうだな。私は子供の頃など、勉強せずにジルベールを追いかけていたが、フェルナンが私より賢い子に育ってくれたようでうれしい。」
レオナールがフェルナンに笑いかけると、フェルナンもはにかむような表情をした。
「王妃様のお産みになるお子様が、王子様であればそのうち剣を交えるようになり、王女様ならご本を読んで下さる頼もしい兄上になるのだと思います。陛下もお幸せでございますね。」
ベルナルダは、再び優しく微笑んだ。
「あぁ。」
フェルナンは、二人の会話を聞きながら黙々と食事を済ませた。
∴∵
夜、レオナールは寝所に入って今日の事を里桜に話していた。
「そうですか、歴史の勉強を。でも、少し安心致しました。何にも興味が湧かず、部屋に閉じ籠もっている訳ではなくて。」
「そうだな。」
「いつか、心の傷が癒えたら、この子とも共に遊んでくれるでしょうか。」
「そんな日が来れば良いな。」
「えぇ。しばらく私は表立ってフェルナンと関わりを持たない方が良いのでしょうが、いつかは私を含めみんなで明るく過ごせる日が来れば良いなと思います。」