転生聖職者の楽しい過ごし方

第1話 始まり

 ある、神の時代。心が清らかで美しく、光り輝いているような少女がいました。全知全能の神はこの少女を愛しましたが、少女にはその愛が重く、地上へ降りてしまいました。神はそれでも少女を忘れられず、少女がいつでも自分の元へ帰ってこられるようにその地に泉を湧かせて、そこから自分の元まで続く虹を架けました。


∴∵


「それが、我が国の建国の女神Iris様でございます。」

 如何にも威厳のありそうな顔つきの白い装束を身に纏った壮年の男性に建国神話を聞くこと十数分か・・・
 これが、夢にまで見た異世界転生?それとも私が大好きな作品の世界に入った?小説も漫画も読み漁ったし、ゲームもいくつかやった。全部を知っているわけではないけど、でも・・・聞いたことのない建国神話に見覚えのない服。・・・普通ヒロインが異世界転生するって彼女が大好きでやりこんだゲームだとか、小説だとかに転生するんじゃないの?
 いや・・・もしかしたら隣の彼女が・・・あっ多分隣の子も状況が分かってないみたい。

「・・・と言う事で私たちは本日異世界召喚術を行い、見事救世主様を召喚させて頂いたわけです。」
 
 あっ。全然話し聞いていなかった。

「そして先ほどもお話しましたが、神様が救世主様へ石をお渡しになります。その石をお持ちの方が救世主様だと言う事になります。」

 石?神様が?くれる石?

「それはどんなものなのですか?」
「私どももそれを見たことはございません。前回この国に救世主様を召喚致しましたのは何百年も前の事でございまして。」

 隣の子を見ると彼女は何かを考え込んでいる。彼女もきっと心当たりがないんだ・・・なら私が石を持っていて私が救世主で私がヒロインだって可能性がある。だって私、異世界転生もの大好きだし、唯一の身内の兄とも仲が悪くてもう何年も会ってないし、友達もいないし、日本になんの未練もない。転生ヒロインってこんな子ばっかりじゃない?隣の子お嬢様っぽいし、この子は私の召喚に思いがけず付き合わされちゃったってこと?

「あっ!私、持ってました。石。」

 そう、石ではないけどそれっぽいもの。漫画の新作を買ったときくじ引きで引いた・・・

「はい。これが、その石です。」
「おぉ。これは・・・この世の物とは思えない透明度に、軽さ。この大きさでこの軽さは、神の遣わされた石かもしれません。」
「救世主様ようこそ、我がゼフェン・プリズマーティッシュ・クルウレンへ。」
 そこにいた男性や女性が一斉に跪いた。
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