転生聖職者の楽しい過ごし方
「陛下。ぜひ、救世主様降臨パレードを催し下さい。」
「此度の魔獣討伐での救世主様のご活躍に対し、国民全員がお礼をしたいと思っているのです。平民では救世主様にお会い出来る機会などございませんから、パレードでお目見え頂ければ国民も喜びます。」
「そして、救世主様に褒賞を授与して下さい。」
「慣習として今までも救世主様と渡り人には爵位を授与していたはずです。このご活躍には侯爵の位を授与してもおかしくないはずです。」
ロベールとレイベスは畳み掛けるように話す。クロヴィスは、レオナールの隣で小さなため息を吐く。
暗視ガラスが利子の作ったものだと誤った情報が独り歩きしているのは、この二人のせいだった。あの日、暗視ガラスを戦陣へ届け、ジルベールの作戦を実行して魔獣を倒したのは近衛騎士団の第一団隊だった。
第一団隊は王族の警備が主たる仕事の近衛騎士団唯一の魔力を駆使し魔獣討伐を行う戦闘専門部隊だが、その団隊長であるルシアンが利子の専属護衛になったことで、世間的には利子が第一団隊預かりになっているように見えていた。
そこで、ロベールが『第一団隊があのガラスを使って討伐したと言う事は、トシコ様が魔法陣をお作りになったに違いない。さすが、救世主様だ。』と言い始め、そしてそれを布教活動宜しくレイベスが広めた。
それは瞬く間にいかにも真実の様に巷へも広がった。
「トシコ嬢は、今でも魔術の訓練を休みがちだと聞くが、お体の調子が悪いのでは?そんな時にパレードなど・・・舞踏会の二の舞になってしまいませんか?」
クロヴィスは柔和な笑顔を向ける。兄弟の中ではこの笑顔は精巧な作り笑いだと誰もが知っている。
「それは、国軍が暗視ガラスを持って行ってしまったため、もう一つ作り騎士団用に暗視ガラスを納品したためです。あれを作るには大きな魔力が必要になるのです。なので、半日以上、出来れば一日はゆっくりと休まねばなりません。」
根本が間違っているが、妙な部分が合っている。レオナールはたまらず、苦笑いをする。
∴∵
「救世主トシコ様。パレードの際のドレスはどのように致しましょう?」
ジェラルドは下心が現れている様な笑顔を利子に向ける。
「どう?パレードは決まりそうかしら?」
「大丈夫でしょう。レイベス尊者もロベール尊者も陛下へきちんとお話して下さると仰っておりました。そして、お二人とも救世主様のこのほどのご活躍に心より感謝していますので。早く爵位の授与もして頂ける様お話しすると仰っていました。」
「えぇ。ありがとう。あまり大事にはしたくなかったのですけれど、尊者様の熱意に胸を打たれまして。お二人が喜んで下さるなら、私に出来ることはして差し上げたくなってしまいました。」
利子は、ジェラルドの瞳をじっと見つめ、ほんの少しトーンを抑えた声でゆっくりと呟きはじめた。
「ジェラルド様、このパレードにはぜひ陛下もご一緒にとお口添え下さい。」
「はい?陛下でございますか?」
ジェラルドは目を丸くする。
「しかし、今回のパレードの主役は救世主様です。陛下は若く見目も大変良いので我が国の若い女性から絶大な人気を誇っております。その陛下が横にいらしては、トシコ様が目立たなくなってしまいます。」
「・・・えぇ。そうですね。まぁ・・・私はそんなに目立たなくても良いのですけれど・・・ただ、横に陛下がいらして下されば、心強いかと思ったものですから。」
利子は、そう言いながら冷め切った紅茶を口に含んだ。
「此度の魔獣討伐での救世主様のご活躍に対し、国民全員がお礼をしたいと思っているのです。平民では救世主様にお会い出来る機会などございませんから、パレードでお目見え頂ければ国民も喜びます。」
「そして、救世主様に褒賞を授与して下さい。」
「慣習として今までも救世主様と渡り人には爵位を授与していたはずです。このご活躍には侯爵の位を授与してもおかしくないはずです。」
ロベールとレイベスは畳み掛けるように話す。クロヴィスは、レオナールの隣で小さなため息を吐く。
暗視ガラスが利子の作ったものだと誤った情報が独り歩きしているのは、この二人のせいだった。あの日、暗視ガラスを戦陣へ届け、ジルベールの作戦を実行して魔獣を倒したのは近衛騎士団の第一団隊だった。
第一団隊は王族の警備が主たる仕事の近衛騎士団唯一の魔力を駆使し魔獣討伐を行う戦闘専門部隊だが、その団隊長であるルシアンが利子の専属護衛になったことで、世間的には利子が第一団隊預かりになっているように見えていた。
そこで、ロベールが『第一団隊があのガラスを使って討伐したと言う事は、トシコ様が魔法陣をお作りになったに違いない。さすが、救世主様だ。』と言い始め、そしてそれを布教活動宜しくレイベスが広めた。
それは瞬く間にいかにも真実の様に巷へも広がった。
「トシコ嬢は、今でも魔術の訓練を休みがちだと聞くが、お体の調子が悪いのでは?そんな時にパレードなど・・・舞踏会の二の舞になってしまいませんか?」
クロヴィスは柔和な笑顔を向ける。兄弟の中ではこの笑顔は精巧な作り笑いだと誰もが知っている。
「それは、国軍が暗視ガラスを持って行ってしまったため、もう一つ作り騎士団用に暗視ガラスを納品したためです。あれを作るには大きな魔力が必要になるのです。なので、半日以上、出来れば一日はゆっくりと休まねばなりません。」
根本が間違っているが、妙な部分が合っている。レオナールはたまらず、苦笑いをする。
∴∵
「救世主トシコ様。パレードの際のドレスはどのように致しましょう?」
ジェラルドは下心が現れている様な笑顔を利子に向ける。
「どう?パレードは決まりそうかしら?」
「大丈夫でしょう。レイベス尊者もロベール尊者も陛下へきちんとお話して下さると仰っておりました。そして、お二人とも救世主様のこのほどのご活躍に心より感謝していますので。早く爵位の授与もして頂ける様お話しすると仰っていました。」
「えぇ。ありがとう。あまり大事にはしたくなかったのですけれど、尊者様の熱意に胸を打たれまして。お二人が喜んで下さるなら、私に出来ることはして差し上げたくなってしまいました。」
利子は、ジェラルドの瞳をじっと見つめ、ほんの少しトーンを抑えた声でゆっくりと呟きはじめた。
「ジェラルド様、このパレードにはぜひ陛下もご一緒にとお口添え下さい。」
「はい?陛下でございますか?」
ジェラルドは目を丸くする。
「しかし、今回のパレードの主役は救世主様です。陛下は若く見目も大変良いので我が国の若い女性から絶大な人気を誇っております。その陛下が横にいらしては、トシコ様が目立たなくなってしまいます。」
「・・・えぇ。そうですね。まぁ・・・私はそんなに目立たなくても良いのですけれど・・・ただ、横に陛下がいらして下されば、心強いかと思ったものですから。」
利子は、そう言いながら冷め切った紅茶を口に含んだ。