転生聖職者の楽しい過ごし方
第23話 期待された役割
「本当に良かったの?」
クロヴィスがハーブティーを飲みながら里桜に問いかけた。
「良かったのとは?」
「これで、公に彼女の功績になった様なものだろう?」
「私、救世主の影武者なんです。」
里桜が屈託なく笑うと、クロヴィスも笑顔を見せる。
「神殿ではどう?」
「アナスタシアさんがフォローしてくれていて。」
クロヴィスは、軽く頷き、
「今日は、彼女の叙爵が決まったことを報せに来ただけだから。」
「はい。わざわざ、お忙しいのにありがとうございます。」
クロヴィスは少しため息を吐いて、席を立った。
∴∵
「トシコ様叙爵の式典後に近衛騎士団第一団隊と陸軍特殊魔獣討伐部隊が合同実働演習をなさるそうです。」
寝る前のハーブティーを飲んでいると、アナスタシアが言った。
「そういうのは良くやるんですか?」
「私が知る限りでは初めてです。」
「兄が言うには、最近騎士団と国軍の関係が良くないので、合同で演習をすれば、何かが動くのではないかと思ったようです。絆は深まらなくとも、これ以上悪くなることもないのではないかと。」
「実働演習の場合は、片方が魔術剣を、もう片方が魔剣を使って戦う形式も多いので、騎士団からも国軍からも魔剣の催促があるかも知れませんね。」
「分かりました。少し急ぐにしても、午前と午後で一本ずつ増やせるかな?って所だと思いますけど。」
「書類の作成は私にお任せ下さい。お力添え致します。」
「いつもありがとうございます。アナスタシアさん。」
「いいえ。お気になさいません様に。」
∴∵
朝、リナとアナスタシアはそれぞれの支度を終え、リナは里桜のお茶の準備を、アナスタシアが里桜の身支度を手伝いにそれぞれが持ち場へ行った。
「おはようございます。リオ様。本日は少し涼しいようです。」
天蓋の外からアナスタシアが声を掛けるといつもは眠そうな里桜の声が聞こえてくるが、返事がない。
「リオ様?お目覚めでございますか?」
しばらく待ってみても、返事が聞こえなかった。
「失礼させて頂き、入りますね。」
天蓋の中に入ると、顔を赤らめた里桜が苦しそうにしていた。
「リオ様、熱があるようです。少しお待ちくださいね。」
アナスタシアが手をかざし、里桜の顔色は少し良くなった。
「今、身体拭くタオルをお持ちします。起き上がらず、そのままお待ちくださいね。」
次にアナスタシアが現れた時は、リナも一緒にいいた。
「上体を起こせますか?」
「はい。もう大丈夫です。」
里桜が起き上がると、背をリナが支える。
「濡れタオルです。お体をどうぞ。」
アナスタシアが渡すと、それを受け取り、首回りをゆっくりと拭いた。
∴∵
四本の魔剣を前に、時計を見るともう昼を過ぎた頃になっていた。
朝、熱を出しアナスタシアに治療してもらったが、またもや熱が上がり始めていた。それは、段々に怠くなる体が物語る。
治癒の魔術を使える様にはなったが、自らにかけられるのは軽い怪我の時だけ。と言うより、風邪など体力が弱まっている時、魔術をかけるには更に体力を使うので、プラマイゼロになってしまい意味がないのだ。
「せっかく魔力があるのに自分を治せないなんて……。騎士団に行かなくちゃ。」
午前中に第一団隊の騎士が回収に来てくれたが、出来上がっておらず、帰ってもらっていた。
四本を纏めて持つと、ずっしりと重みが腕にかかる。重いものは浮かせて運ぶ事が出来るが、今日は無駄な体力は使いたくない。
重厚な印象の騎士団棟の階段を上る、いつもより更に一歩が遅い。
「おい。最近見なかったのに、今日は来てるぞ、カタツムリ。」
いつものように嘲った様に話す。すれ違いざまに騎士と里桜の持っていた剣が接触し、里桜は大きくバランスを崩すと階段下へ剣諸とも落下した。
クロヴィスがハーブティーを飲みながら里桜に問いかけた。
「良かったのとは?」
「これで、公に彼女の功績になった様なものだろう?」
「私、救世主の影武者なんです。」
里桜が屈託なく笑うと、クロヴィスも笑顔を見せる。
「神殿ではどう?」
「アナスタシアさんがフォローしてくれていて。」
クロヴィスは、軽く頷き、
「今日は、彼女の叙爵が決まったことを報せに来ただけだから。」
「はい。わざわざ、お忙しいのにありがとうございます。」
クロヴィスは少しため息を吐いて、席を立った。
∴∵
「トシコ様叙爵の式典後に近衛騎士団第一団隊と陸軍特殊魔獣討伐部隊が合同実働演習をなさるそうです。」
寝る前のハーブティーを飲んでいると、アナスタシアが言った。
「そういうのは良くやるんですか?」
「私が知る限りでは初めてです。」
「兄が言うには、最近騎士団と国軍の関係が良くないので、合同で演習をすれば、何かが動くのではないかと思ったようです。絆は深まらなくとも、これ以上悪くなることもないのではないかと。」
「実働演習の場合は、片方が魔術剣を、もう片方が魔剣を使って戦う形式も多いので、騎士団からも国軍からも魔剣の催促があるかも知れませんね。」
「分かりました。少し急ぐにしても、午前と午後で一本ずつ増やせるかな?って所だと思いますけど。」
「書類の作成は私にお任せ下さい。お力添え致します。」
「いつもありがとうございます。アナスタシアさん。」
「いいえ。お気になさいません様に。」
∴∵
朝、リナとアナスタシアはそれぞれの支度を終え、リナは里桜のお茶の準備を、アナスタシアが里桜の身支度を手伝いにそれぞれが持ち場へ行った。
「おはようございます。リオ様。本日は少し涼しいようです。」
天蓋の外からアナスタシアが声を掛けるといつもは眠そうな里桜の声が聞こえてくるが、返事がない。
「リオ様?お目覚めでございますか?」
しばらく待ってみても、返事が聞こえなかった。
「失礼させて頂き、入りますね。」
天蓋の中に入ると、顔を赤らめた里桜が苦しそうにしていた。
「リオ様、熱があるようです。少しお待ちくださいね。」
アナスタシアが手をかざし、里桜の顔色は少し良くなった。
「今、身体拭くタオルをお持ちします。起き上がらず、そのままお待ちくださいね。」
次にアナスタシアが現れた時は、リナも一緒にいいた。
「上体を起こせますか?」
「はい。もう大丈夫です。」
里桜が起き上がると、背をリナが支える。
「濡れタオルです。お体をどうぞ。」
アナスタシアが渡すと、それを受け取り、首回りをゆっくりと拭いた。
∴∵
四本の魔剣を前に、時計を見るともう昼を過ぎた頃になっていた。
朝、熱を出しアナスタシアに治療してもらったが、またもや熱が上がり始めていた。それは、段々に怠くなる体が物語る。
治癒の魔術を使える様にはなったが、自らにかけられるのは軽い怪我の時だけ。と言うより、風邪など体力が弱まっている時、魔術をかけるには更に体力を使うので、プラマイゼロになってしまい意味がないのだ。
「せっかく魔力があるのに自分を治せないなんて……。騎士団に行かなくちゃ。」
午前中に第一団隊の騎士が回収に来てくれたが、出来上がっておらず、帰ってもらっていた。
四本を纏めて持つと、ずっしりと重みが腕にかかる。重いものは浮かせて運ぶ事が出来るが、今日は無駄な体力は使いたくない。
重厚な印象の騎士団棟の階段を上る、いつもより更に一歩が遅い。
「おい。最近見なかったのに、今日は来てるぞ、カタツムリ。」
いつものように嘲った様に話す。すれ違いざまに騎士と里桜の持っていた剣が接触し、里桜は大きくバランスを崩すと階段下へ剣諸とも落下した。