転生聖職者の楽しい過ごし方
第25話 合同演習の夜
「今日の合同演習はまるでトーナメントの様で、迫力が凄まじかったですな。」
「いやー。本当に。」
マクシミリアンの言葉にウィリアムが同調する。
「しかし、負傷兵が多く出たと聞きました。魔獣討伐の前線部隊ばかり大丈夫でしょうか。」
「そんな時の為に、救世主様がいるんだよ。サミュエル。」
レオナールの隣に座る利子は曖昧に笑う。
「学院時代に読んだ史書には、救世主様は魔術を用いた攻撃も治癒も得手なのだと書いてありました。」
「そうなんですか?尊者様。」
サミュエルがロベールに聞いた。
「魔力が強いと、攻撃の魔術にも長けますが、治癒の魔術にも長けるのは事実です。史書には、白金の魔力を持つと怪我と同時に体力も回復させることができると。」
ロベールは自分でそう口に出しながら、救護テントで見た状態を思い出す。あの後も診療室から出てきた兵士たちは、揃って体力も回復して出てきていた。
魔獣討伐の日は現場が混乱していて、治療が終わった兵士たちを看護する役割の者がいなかった。だから、渡り人が担当する救護テントに兵士が一人しかいなかったことで、現場の神官たちが、渡り人は患者を診ていないと言い出したのだった。
それも仕方のないことだった。ロベールが白金の魔力があったときですらも、重傷の患者は入院が必要だったのだから。
「ロベール尊者、演習中に救護テントへ顔を出されたようですが、負傷兵はどうでした?」
レオナールは問いかけた。
「はい。リオ聖徒の治癒魔術のおかげで、兵士たちは元気になっていました。」
ロベールがレオナールの方を見ると、何か言いたげな顔をしたがそれ以上何も言わなかった。
「リオ聖徒とは、例の渡り人でございますか?それならば、兵士たちの体力を回復させるためにも、明日救世主様に兵士たちが入院している部屋に訪れてもらってはどうですか?」
「おぉ。それは良い案だジェラルド。魔獣討伐に大きなお力添え下さった救世主様に直接回復の魔術を掛けてもらえれば、兵士たちの士気も上がるでしょう。どうでしょうロベール殿。」
「えぇ。それは士気が上がると思いますが、救世主様は聖徒の様に治癒の魔術については練習をされていませんので、今は難しいかと・・・。」
レオナールの横で利子は安堵のため息を吐いた。それに気がつかないマクシミリアンは続けて話す。
「それならば、今後のためにも救世主様に治癒の魔術を覚えて頂きましょう。戦女神の様な救世主様に治癒の魔術をかけてもらえれば、兵士も安心することでしょう。ぜひ、お世話役のレイベス殿へお口添えを願います。ロベール殿。」
「それは、構いませんが。救世主様、如何なさいますか?」
ロベールはレオナールを挟んで座っている利子へ問いかけた。
「また、倒れてしまって皆さんにご心配かけてもいけませんので、体調をみて練習したいと思います。」
それを聞いてマクシミリアンたちは何かに感服した様に頷く。
∴∵
里桜が居間に入ると、アナスタシアが忙しなく働いていた。
「リオ様、本日はお疲れでございましょう?今日はリオ様のお好きな鴨肉のソテーにして頂きました。」
アナスタシアがテーブルにカトラリーをセットしながら里桜の方を見た。
「リナさんは?」
ディナーテーブルから少し離れた所に置いてあるテーブルセットへ腰を下ろしながらアナスタシアに聞く。
「国軍棟に行ってらっしゃいます。」
「それにしても、事前に聞いていなかったので治療に来た兵士の方に聞いたときはびっくりしました。」
「直前に陛下から話があった様ですよ。」
「それで、リナさんはお怪我とかしていませんか?対戦した騎士しか救護テントにいらっしゃらなかったので。」
「ほんの少し、切り傷はありましたが、私が治療しましたので、大丈夫です。」
「そうですか。安心しました。」
そこに力強いノックの音がした。アナスタシアが扉を開けると、度々当番で護衛をしてくれている国軍の兵士だった。
「本日はお疲れまでございました。」
アナスタシアが挨拶すると、兵士は礼儀正しく挨拶を返す。
「バシュレ幕僚より伝言がございます。本日、演習の打ち上げを行いますので、よろしければご参加下さい。とのことです。」
アナスタシアは、“少々お待ちください”と言って、一旦扉を閉めた。
「たぶん、ですが・・・リナさんは人質状態ですか?」
里桜が笑いながら問いかけると、アナスタシアは困った様に笑った。
「着替えるまでお待ちくださいと伝えます。」
「お願いします。」
「いやー。本当に。」
マクシミリアンの言葉にウィリアムが同調する。
「しかし、負傷兵が多く出たと聞きました。魔獣討伐の前線部隊ばかり大丈夫でしょうか。」
「そんな時の為に、救世主様がいるんだよ。サミュエル。」
レオナールの隣に座る利子は曖昧に笑う。
「学院時代に読んだ史書には、救世主様は魔術を用いた攻撃も治癒も得手なのだと書いてありました。」
「そうなんですか?尊者様。」
サミュエルがロベールに聞いた。
「魔力が強いと、攻撃の魔術にも長けますが、治癒の魔術にも長けるのは事実です。史書には、白金の魔力を持つと怪我と同時に体力も回復させることができると。」
ロベールは自分でそう口に出しながら、救護テントで見た状態を思い出す。あの後も診療室から出てきた兵士たちは、揃って体力も回復して出てきていた。
魔獣討伐の日は現場が混乱していて、治療が終わった兵士たちを看護する役割の者がいなかった。だから、渡り人が担当する救護テントに兵士が一人しかいなかったことで、現場の神官たちが、渡り人は患者を診ていないと言い出したのだった。
それも仕方のないことだった。ロベールが白金の魔力があったときですらも、重傷の患者は入院が必要だったのだから。
「ロベール尊者、演習中に救護テントへ顔を出されたようですが、負傷兵はどうでした?」
レオナールは問いかけた。
「はい。リオ聖徒の治癒魔術のおかげで、兵士たちは元気になっていました。」
ロベールがレオナールの方を見ると、何か言いたげな顔をしたがそれ以上何も言わなかった。
「リオ聖徒とは、例の渡り人でございますか?それならば、兵士たちの体力を回復させるためにも、明日救世主様に兵士たちが入院している部屋に訪れてもらってはどうですか?」
「おぉ。それは良い案だジェラルド。魔獣討伐に大きなお力添え下さった救世主様に直接回復の魔術を掛けてもらえれば、兵士たちの士気も上がるでしょう。どうでしょうロベール殿。」
「えぇ。それは士気が上がると思いますが、救世主様は聖徒の様に治癒の魔術については練習をされていませんので、今は難しいかと・・・。」
レオナールの横で利子は安堵のため息を吐いた。それに気がつかないマクシミリアンは続けて話す。
「それならば、今後のためにも救世主様に治癒の魔術を覚えて頂きましょう。戦女神の様な救世主様に治癒の魔術をかけてもらえれば、兵士も安心することでしょう。ぜひ、お世話役のレイベス殿へお口添えを願います。ロベール殿。」
「それは、構いませんが。救世主様、如何なさいますか?」
ロベールはレオナールを挟んで座っている利子へ問いかけた。
「また、倒れてしまって皆さんにご心配かけてもいけませんので、体調をみて練習したいと思います。」
それを聞いてマクシミリアンたちは何かに感服した様に頷く。
∴∵
里桜が居間に入ると、アナスタシアが忙しなく働いていた。
「リオ様、本日はお疲れでございましょう?今日はリオ様のお好きな鴨肉のソテーにして頂きました。」
アナスタシアがテーブルにカトラリーをセットしながら里桜の方を見た。
「リナさんは?」
ディナーテーブルから少し離れた所に置いてあるテーブルセットへ腰を下ろしながらアナスタシアに聞く。
「国軍棟に行ってらっしゃいます。」
「それにしても、事前に聞いていなかったので治療に来た兵士の方に聞いたときはびっくりしました。」
「直前に陛下から話があった様ですよ。」
「それで、リナさんはお怪我とかしていませんか?対戦した騎士しか救護テントにいらっしゃらなかったので。」
「ほんの少し、切り傷はありましたが、私が治療しましたので、大丈夫です。」
「そうですか。安心しました。」
そこに力強いノックの音がした。アナスタシアが扉を開けると、度々当番で護衛をしてくれている国軍の兵士だった。
「本日はお疲れまでございました。」
アナスタシアが挨拶すると、兵士は礼儀正しく挨拶を返す。
「バシュレ幕僚より伝言がございます。本日、演習の打ち上げを行いますので、よろしければご参加下さい。とのことです。」
アナスタシアは、“少々お待ちください”と言って、一旦扉を閉めた。
「たぶん、ですが・・・リナさんは人質状態ですか?」
里桜が笑いながら問いかけると、アナスタシアは困った様に笑った。
「着替えるまでお待ちくださいと伝えます。」
「お願いします。」