転生聖職者の楽しい過ごし方
「シド、少し話がしたいんだが・・・」
シドは、分かっていたとばかりに、少し頷いて部屋に招いた。
「叔父上どうぞ。」
シドは香りの良い紅茶をロベールに差し出した。
「リオ聖徒のことだが…」
「はい。」
「彼女は何者だ?リオ聖徒が本当の救世主なのか?」
レオナールたちとの会食が終わり、神殿の自室に戻って史書を読みあさったが、白金の魔力を持つ渡り人が二人来た記録はなかった。二人が同時に渡ってきても、片方が白金で、もう片方が白。または、両方とも白だった。
「もう少ししましたら、陛下がいらっしゃいます。話はそれから・・」
そう言っているうちに、ノックがして、レオナールが入ってきた。
「大叔父上、大変お待たせしました。」
そう言って空いている席へ腰をかけた。
「伯父上の所へいらっしゃると思っていました。大叔父上がお聞きになりたいのは、リオ嬢の力のことですね。」
「あぁ。今日、救護テントへ顔を出したら、重傷を負った兵士たちがみな揃って体力も回復したと言う。史書などには魔力が強ければ傷と共に体力も回復させると書いてはあったが、白金の魔力を以てしても入院は必要となる。しかし、今日の兵士たちは…。」
「彼女は虹の魔力を持っています。」
「なんだと?それは、神話の…」
「はい。計測石でも確認を取りました。」
「それならば、神殿に入るときも計測石で測ったではないか。」
「彼女は魔力を自分で調整できる様訓練をしました。虹の力を持つことを隠すために。」
「計測石に通す魔力をそれほどまでに調整できる様にするとは…かなりの訓練が必要なはずだが、そこまでしてなぜ、隠す。なぜ、公表しない?」
「救世主の降臨だけでこの騒ぎなのです。虹の魔力があるとわかったらどうなると思いますか?」
ロベールは興奮した様に話していたが、一拍おいて、
「あぁ。そうだな。では、私でさえも複写できなかったあの強い魔法陣は?」
「えぇ、彼女です。」
「しかしあの時、ジルベールが…。」
「あれは、新しい魔獣に手も足も出なく、リオ嬢に最前線に行ってくれないかと、クロヴィスとジルベールが申し出に行ったためです。その際、リオ嬢が作り出したのが暗視ガラスでした。」
「ガラス自体は普通のガラスなのか?」
「はい。手近なガラス板などありませんでしたから、宿舎の窓ガラスを一枚外して持って行った様です。なので普通のガラス板です。」
「それでは、今日使われていた魔剣も…。」
「騎士団の物も国軍の物も全てリオ嬢一人で作ったものです。」
「しかし、一人であの本数は……」
「彼女は半日で三本作ります。演習が決まってからは四本作ってくれていました。」
「氷と水や、風と火など複数を操る魔剣をか?」
ロベールは自分でも気付かぬうちに、前のめりになって話をしている。
「氷と水だけだから、半日で四本作れるのだそうです。」
「なんと?」
「最初、彼女の作る魔剣は魔力の無い人間では使えない剣だったのです。それがどうしてなのか探るうちに、彼女は一本の魔剣に水、風、土、火を操れる魔法陣を付与していた事がわかりました。それによって剣の魔力が強すぎてしまい、魔力の無い人間では操れない剣になっていたようです。属性を単独にした魔剣なら、魔力の無い人間でも使えるようになりました。」
「では、四種の属性を持った剣があるのか?」
「はい。国軍の中隊長以上はみなその魔剣を所持しています。」
「それでは、これからは魔獣討伐の際に何種類もの剣を持たずとも良いのか?」
「はい。」
レオナールの表情はどこか自慢げだった。
「通常魔剣を作るときは、活用しやすい土の魔術を付けるだろう。砂を使えば、ある程度の物は切ることも出来るし、砂嵐を起こせば目くらましも出来る。使い勝手も良く黄色の魔力でも安定した魔力の魔剣を生み出せる。火の魔剣は魔力が弱いと戦えるほどの炎を起こすことが出来ず、橙の魔力以上で作らなければ使い物にはならない。水や風は魔力が必要な割に、活用できる機会が少ない・・・土単独で魔剣を作った方が威力があるのでは。」
「リオ嬢の作る魔剣は四種どれも尊者の作る魔剣の威力と遜色ありません。」
「何という力か・・・」
驚嘆の表情で、椅子の背もたれにもたれかかる。
「それでは、先の魔獣討伐の功績は・・・」
「ダウスターニスの討伐に関する支援は全てリオ嬢によるものです。大叔父上もご承知の通り、彼女の助けがなければあの結果はなし得なかった。子細は教えてもらえませんでしたが、隣国の戦記を読めば魔獣の正体と弱点が分かること、暗視ガラスの作成、魔剣の作成、そしてなにより、負傷兵の治療。」
「それを知っていたから、あれほどまでに救世主様の叙爵を躊躇っていたのか。」
「はい。ハワードの動きが気になり今まで本当の事を申し上げずにいました。申訳ありませんでした。」
「あぁ。確かに、ハワード候は救世主様の力を笠に着て何かをしようと企んでいるふしがある。もし、彼女に虹の力があるのなら、遠ざけておくのが良かっただろう。」
ロベールは長いため息を吐く。
「しかし、計測石を他の色に出来るほど、魔力の調整が出来ているのなら、もう公表しても良いのでは?」
「えぇ。ここ最近、リオ嬢の置かれている立場が悪くなりすぎています。なのでそろそろ公表した方がと言う意見もありますが、本人はそれを望んでいません。そこで今日大叔父上にお願いしたいのは、神殿での待遇の改善です。一部では、神官がリオ嬢に仕事を押しつけたりしているなんて話も聞きます。彼女が普通の渡り人だったとしても、白の魔力がある聖徒が格下の神官に仕事を押しつけられるのは神殿としていかがなものか。」
ロベールは眉間にしわを寄せる。
「神職に就いた者はいかなる家名や爵位があっても国政には口を出せない。それと同じく国も神殿には口を出さない。それは分かっていますが…。」
「あぁ。彼女に対する待遇が不当だったことは認める。そして、これからはそのようなことがない様に私が指導する。」
シドは、分かっていたとばかりに、少し頷いて部屋に招いた。
「叔父上どうぞ。」
シドは香りの良い紅茶をロベールに差し出した。
「リオ聖徒のことだが…」
「はい。」
「彼女は何者だ?リオ聖徒が本当の救世主なのか?」
レオナールたちとの会食が終わり、神殿の自室に戻って史書を読みあさったが、白金の魔力を持つ渡り人が二人来た記録はなかった。二人が同時に渡ってきても、片方が白金で、もう片方が白。または、両方とも白だった。
「もう少ししましたら、陛下がいらっしゃいます。話はそれから・・」
そう言っているうちに、ノックがして、レオナールが入ってきた。
「大叔父上、大変お待たせしました。」
そう言って空いている席へ腰をかけた。
「伯父上の所へいらっしゃると思っていました。大叔父上がお聞きになりたいのは、リオ嬢の力のことですね。」
「あぁ。今日、救護テントへ顔を出したら、重傷を負った兵士たちがみな揃って体力も回復したと言う。史書などには魔力が強ければ傷と共に体力も回復させると書いてはあったが、白金の魔力を以てしても入院は必要となる。しかし、今日の兵士たちは…。」
「彼女は虹の魔力を持っています。」
「なんだと?それは、神話の…」
「はい。計測石でも確認を取りました。」
「それならば、神殿に入るときも計測石で測ったではないか。」
「彼女は魔力を自分で調整できる様訓練をしました。虹の力を持つことを隠すために。」
「計測石に通す魔力をそれほどまでに調整できる様にするとは…かなりの訓練が必要なはずだが、そこまでしてなぜ、隠す。なぜ、公表しない?」
「救世主の降臨だけでこの騒ぎなのです。虹の魔力があるとわかったらどうなると思いますか?」
ロベールは興奮した様に話していたが、一拍おいて、
「あぁ。そうだな。では、私でさえも複写できなかったあの強い魔法陣は?」
「えぇ、彼女です。」
「しかしあの時、ジルベールが…。」
「あれは、新しい魔獣に手も足も出なく、リオ嬢に最前線に行ってくれないかと、クロヴィスとジルベールが申し出に行ったためです。その際、リオ嬢が作り出したのが暗視ガラスでした。」
「ガラス自体は普通のガラスなのか?」
「はい。手近なガラス板などありませんでしたから、宿舎の窓ガラスを一枚外して持って行った様です。なので普通のガラス板です。」
「それでは、今日使われていた魔剣も…。」
「騎士団の物も国軍の物も全てリオ嬢一人で作ったものです。」
「しかし、一人であの本数は……」
「彼女は半日で三本作ります。演習が決まってからは四本作ってくれていました。」
「氷と水や、風と火など複数を操る魔剣をか?」
ロベールは自分でも気付かぬうちに、前のめりになって話をしている。
「氷と水だけだから、半日で四本作れるのだそうです。」
「なんと?」
「最初、彼女の作る魔剣は魔力の無い人間では使えない剣だったのです。それがどうしてなのか探るうちに、彼女は一本の魔剣に水、風、土、火を操れる魔法陣を付与していた事がわかりました。それによって剣の魔力が強すぎてしまい、魔力の無い人間では操れない剣になっていたようです。属性を単独にした魔剣なら、魔力の無い人間でも使えるようになりました。」
「では、四種の属性を持った剣があるのか?」
「はい。国軍の中隊長以上はみなその魔剣を所持しています。」
「それでは、これからは魔獣討伐の際に何種類もの剣を持たずとも良いのか?」
「はい。」
レオナールの表情はどこか自慢げだった。
「通常魔剣を作るときは、活用しやすい土の魔術を付けるだろう。砂を使えば、ある程度の物は切ることも出来るし、砂嵐を起こせば目くらましも出来る。使い勝手も良く黄色の魔力でも安定した魔力の魔剣を生み出せる。火の魔剣は魔力が弱いと戦えるほどの炎を起こすことが出来ず、橙の魔力以上で作らなければ使い物にはならない。水や風は魔力が必要な割に、活用できる機会が少ない・・・土単独で魔剣を作った方が威力があるのでは。」
「リオ嬢の作る魔剣は四種どれも尊者の作る魔剣の威力と遜色ありません。」
「何という力か・・・」
驚嘆の表情で、椅子の背もたれにもたれかかる。
「それでは、先の魔獣討伐の功績は・・・」
「ダウスターニスの討伐に関する支援は全てリオ嬢によるものです。大叔父上もご承知の通り、彼女の助けがなければあの結果はなし得なかった。子細は教えてもらえませんでしたが、隣国の戦記を読めば魔獣の正体と弱点が分かること、暗視ガラスの作成、魔剣の作成、そしてなにより、負傷兵の治療。」
「それを知っていたから、あれほどまでに救世主様の叙爵を躊躇っていたのか。」
「はい。ハワードの動きが気になり今まで本当の事を申し上げずにいました。申訳ありませんでした。」
「あぁ。確かに、ハワード候は救世主様の力を笠に着て何かをしようと企んでいるふしがある。もし、彼女に虹の力があるのなら、遠ざけておくのが良かっただろう。」
ロベールは長いため息を吐く。
「しかし、計測石を他の色に出来るほど、魔力の調整が出来ているのなら、もう公表しても良いのでは?」
「えぇ。ここ最近、リオ嬢の置かれている立場が悪くなりすぎています。なのでそろそろ公表した方がと言う意見もありますが、本人はそれを望んでいません。そこで今日大叔父上にお願いしたいのは、神殿での待遇の改善です。一部では、神官がリオ嬢に仕事を押しつけたりしているなんて話も聞きます。彼女が普通の渡り人だったとしても、白の魔力がある聖徒が格下の神官に仕事を押しつけられるのは神殿としていかがなものか。」
ロベールは眉間にしわを寄せる。
「神職に就いた者はいかなる家名や爵位があっても国政には口を出せない。それと同じく国も神殿には口を出さない。それは分かっていますが…。」
「あぁ。彼女に対する待遇が不当だったことは認める。そして、これからはそのようなことがない様に私が指導する。」