転生聖職者の楽しい過ごし方
利子は離宮の自室から窓の外を見ていた。先日、男爵の叙爵の時拝領した領地に建造していた屋敷が竣工していた。
本来なら、社交界のオフシーズンである今、新屋敷に移りたいのだが、レオナールの許可が下りず、離宮で日がな一日お酒を飲んでいる。
「救世主トシコ様。ロベール尊者がいらっしゃるそうです。」
利子は、“そう”と答えながら、ロベールと最後に会ったのはいつだったかと考える。噂でレオナールが里桜へ馬を送ったと聞いたとき、ロベールを呼んで事情を聞いたのが最後だった。
ロベールが利子と疎遠になっている理由を利子なりに考えていた。
「私がこの国の王妃になる事にやっと気がついたのかしら。ねぇリンデル。」
「はい。救世主トシコ様。」
∴∵
ゼフェン・プリズマーティッシュ・クルウレンでは十二月に入ると一年の恙無い生活を神に感謝する祭りが行われ、それが終わると新年を祝う準備が始まる。
年が明けると一年の無病息災を祈る祭りが行われ、二月になると建国記念日がある。
この三ヶ月間レオナールは通常の仕事に加えこれらの年中行事があるので休む暇さえない。来週は虹の女神が自らの力を分け与えた初代王の即位の日で建国記念日として三日間の祝日になっている。最終日の夜は王都の中央広場に大きなかがり火が焚かれ、三日間に及ぶ祭りが終わりを迎える。
「来週のボンファイアでやっと一区切りが着くな。」
クロヴィスは、レオナールを労う様に言った。
「毎年の事と分かっていても楽ではないな。」
「トシコ嬢の定期報告書が届いたが、これから一体どうするつもりなんだ。」
「もうそろそろ、彼女が救世主ではない事とリオが虹の女神だと言う事を公表しなければいけないとは思っているが…。」
「五月の虹の女神祭りには公表できていれば国民も盛り上がるだろうが、あの子はそれを望んではいないだろうし。」
“あぁ。”と小さく相づちを打つレオナールにクロヴィスは切り出す。
「お前が、彼女の事を公表したがらない理由はなんだ?あの子が目立ちたがらないって理由以外にもあるんだろう?」
黙秘を決め込もうとしたが、クロヴィスも聞くまでは動かないと意思を見せる。
「俺がリオを憎からず思っていることは確かだ。リオが虹の女神だとわかれば、国民も側近も神殿もリオと俺の結婚を望むだろう。しかも、俺にはまだ正妃がいない。だからリオを正妃にと話は進むはずだ。公表したあとでは俺の気持ちすらも伝わらず、事が進むだろう。俺がリオを愛おしく思っているとは伝わらず、ただ魔力の強い後継者を産ませるために国王が虹の女神に求婚しているとあいつに思われるのは避けたい。それに、王妃となれば表に出る様なことも目立つこともやらなければならない。それはあいつには重荷だ。…それが理由だ。」
クロヴィスは小さく息を吐いた。大凡は予測できていたが、それがやはり問題だった。クロヴィスの願いとしても、里桜が王妃になってくれたらと思うことはある。
しかし、レオナールも心配している様に、里桜自身が王妃の座など望んでいない。それでも、里桜がレオナールの事を愛してくれさえすれば、レオナールと共にクロヴィスや他の兄弟たちが全力で手助けするつもりではいるが。
「まぁ。あの子相手じゃ、一度絡まったら最後。ブチッと糸を切断されかねない。そうしたら、王妃はおろか、側妃とか愛妾とかも無理だろうな。」
「想像が付くから怖いこと言うな。」
「来週のボンファイアが終われば、少しは時間が取れる。頑張れよ。」
クロヴィスは笑って部屋を出て行った。
本来なら、社交界のオフシーズンである今、新屋敷に移りたいのだが、レオナールの許可が下りず、離宮で日がな一日お酒を飲んでいる。
「救世主トシコ様。ロベール尊者がいらっしゃるそうです。」
利子は、“そう”と答えながら、ロベールと最後に会ったのはいつだったかと考える。噂でレオナールが里桜へ馬を送ったと聞いたとき、ロベールを呼んで事情を聞いたのが最後だった。
ロベールが利子と疎遠になっている理由を利子なりに考えていた。
「私がこの国の王妃になる事にやっと気がついたのかしら。ねぇリンデル。」
「はい。救世主トシコ様。」
∴∵
ゼフェン・プリズマーティッシュ・クルウレンでは十二月に入ると一年の恙無い生活を神に感謝する祭りが行われ、それが終わると新年を祝う準備が始まる。
年が明けると一年の無病息災を祈る祭りが行われ、二月になると建国記念日がある。
この三ヶ月間レオナールは通常の仕事に加えこれらの年中行事があるので休む暇さえない。来週は虹の女神が自らの力を分け与えた初代王の即位の日で建国記念日として三日間の祝日になっている。最終日の夜は王都の中央広場に大きなかがり火が焚かれ、三日間に及ぶ祭りが終わりを迎える。
「来週のボンファイアでやっと一区切りが着くな。」
クロヴィスは、レオナールを労う様に言った。
「毎年の事と分かっていても楽ではないな。」
「トシコ嬢の定期報告書が届いたが、これから一体どうするつもりなんだ。」
「もうそろそろ、彼女が救世主ではない事とリオが虹の女神だと言う事を公表しなければいけないとは思っているが…。」
「五月の虹の女神祭りには公表できていれば国民も盛り上がるだろうが、あの子はそれを望んではいないだろうし。」
“あぁ。”と小さく相づちを打つレオナールにクロヴィスは切り出す。
「お前が、彼女の事を公表したがらない理由はなんだ?あの子が目立ちたがらないって理由以外にもあるんだろう?」
黙秘を決め込もうとしたが、クロヴィスも聞くまでは動かないと意思を見せる。
「俺がリオを憎からず思っていることは確かだ。リオが虹の女神だとわかれば、国民も側近も神殿もリオと俺の結婚を望むだろう。しかも、俺にはまだ正妃がいない。だからリオを正妃にと話は進むはずだ。公表したあとでは俺の気持ちすらも伝わらず、事が進むだろう。俺がリオを愛おしく思っているとは伝わらず、ただ魔力の強い後継者を産ませるために国王が虹の女神に求婚しているとあいつに思われるのは避けたい。それに、王妃となれば表に出る様なことも目立つこともやらなければならない。それはあいつには重荷だ。…それが理由だ。」
クロヴィスは小さく息を吐いた。大凡は予測できていたが、それがやはり問題だった。クロヴィスの願いとしても、里桜が王妃になってくれたらと思うことはある。
しかし、レオナールも心配している様に、里桜自身が王妃の座など望んでいない。それでも、里桜がレオナールの事を愛してくれさえすれば、レオナールと共にクロヴィスや他の兄弟たちが全力で手助けするつもりではいるが。
「まぁ。あの子相手じゃ、一度絡まったら最後。ブチッと糸を切断されかねない。そうしたら、王妃はおろか、側妃とか愛妾とかも無理だろうな。」
「想像が付くから怖いこと言うな。」
「来週のボンファイアが終われば、少しは時間が取れる。頑張れよ。」
クロヴィスは笑って部屋を出て行った。