転生聖職者の楽しい過ごし方
「尊者リオ殿いらっしゃいました。」

 レオナールの執務室に入ってきた里桜はいつも下ろしている髪をタイトなアップにしていた。

「行くのか?」
「行きます。私はこの国の尊者です。」

 レオナールは突然里桜の手を取って部屋を出た。里桜は必死に小走りでついて行く。
 王宮の北側の塔に着くと階段を降りていく。

「こんな塔があったなんて知りませんでした。」

 里桜が呟いてもレオナールは言葉を発しなかった。

「厩舎・・ですか?」

 そこは、半地下の様な造りで、薄暗いが外には繋がっている様だった。

「ここにいるのは普通の馬ではない。天馬だ。」

 いくつかある馬房の一つの前に止まった。

「これは私の天馬だ。これに乗って行け。多少気は荒いが…。」

 里桜を目の前にしても嘶く事なく顔を俯かせた天馬をレオナールは優しく見守る。

「まだ王子で騎士だった頃、これに乗っていくつもの前線に向った。魔獣が雄叫びを上げるような現場でもおびえることなく頼もしい相方だ。それに里桜のことも気に入ったようだ。」

 レオナールは手綱を持って天馬を外へ連れ出す。その後を里桜もついて行く。レオナールは振り返り、護衛の兵士にルシアンを呼ぶように伝える。

「馬具もつけるんだ。」
「天馬と言っても普通の馬と一緒だからな。…救世主だと言っても、魔獣討伐の前線へ行った者は数人だ。あとは前回のお前の様に知恵や魔力を生かし魔道具を作って騎士や兵士の後方支援する者が殆どだ。…もしここで、行かないでくれと頼んだら行くことを止めてくれるか?」

 里桜はレオナールをじっと見つめてにっこりと笑った。

「やはり…俺は自分を偽り、リオを送り出すしかないのだな。」


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 読んで頂き、ありがとうございます。

 閑話集 
 ロベールと里桜
 リナ・オリヴィエ 十一歳
 の2話更新しました。
 よろしければご覧頂ければと思います。

 赤井タ子ーAkai・Takoー

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