転生聖職者の楽しい過ごし方
ルシアンと里桜が天馬でエイスクルプチュルの上空を飛ぶ。大きさは三メートルほど。それが四頭とそれより一回り小さいのが一頭。
「部下が何頭かは仕留めたと言っていたが、まだこんなにいたのか。こいつらが群れを作ることは珍しいし、飛べる魔獣なのになぜ飛ばない。」
「まさか、あの小さいのが子供のエイスクルプチュルで、それを守ってるってことはないですか?」
「エイスクルプチュルはそもそも温暖な地には巣を作らない。一日の移動距離は四万キロ以上と言われていて、我が国の様な温暖な地で餌を捕り、永久凍土の北の地へ帰ってそこを寝床としている様だ。子育て中に気が荒くなる様なこともないと昔読んだ覚えがある。しかも、雌は卵を産んだきり子育てはせず、雄が卵から孵し、一人前になるまで育てると書いてあった。」
「では、あんな風に群れでここにいることは今までになかった事なんですね。しかもあんなに激しく暴れてる。」
「山火事が発生する前からあんな状態だったらしい。不幸中の幸いと言うべきか、山火事があったからエイスクルプチュルをあそこに止めておけているようだ。」
「だから一層なぜ飛んで逃げずにあそこにとどまっているのかも不思議ですね。…だけどあんな風に暴れているんじゃ、いつ民間人に犠牲を出すかわからない。」
「あぁ。森を抜ければ港町もある。そこには沢山の国民がいる。魔獣とは言え命だが、人々を守るためだ。君にどんな策があるのかは分からないが、出来るか?」
「はい。まず一案目、行ってきます。」
ルシアンが聞き返すまでもなく、里桜は天馬を下降させ、エイスクルプチュルに近づくと何か白いものを五頭に振りまいた。
∴∵
「リオ様は大丈夫だろうか。」
テントの中で上を見ながら、ぽつりと言った。
「ロベール様は彼女が心配ですか?」
「それは、心配だ。これが初陣だ。しかも天馬で…。」
「リオ様のあの様子じゃ、天馬に乗るという事がどう言う事か陛下から説明を受けていないのでしょうな。」
シドは苦笑いの様な何とも言えない笑いをこぼす。
「陛下もお若い。こうして外堀から埋めようとなさるとは。」
「戻りました。」
里桜の声がテントに響き、その場にいた全員がそちらに向いた。
「いたのは全部で五頭。うち一頭は子供なのかも知れません。少し他のより小型でした。今は山火事に囲まれて足止めが出来ている状態でしたが、いつそれを超えて港町に行くかわかりません。」
「理由は分からないが、この辺りに五頭が固まってとどまっていて、風を飛ばしたりとだいぶ暴れている。」
ルシアンが、地図を指す。
「魔獣の中では気性が穏やかなエイスクルプチュルにしてはめずらしい。」
「実は今、上から塩を撒いてきました。」
「塩?」
「本当は塩化カルシウムを出したかったんですけど、雪国育ちではない私には身近でなかったのか、精製の仕方を知らないせいか、出せなかったので…やむを得ず。」
「どうして塩を?」
「塩は氷を早く溶かすんです。溶けて塩水になれば再氷結するのにも時間がかかるんじゃないかと。塩水は氷点が低いので真水より凍りにくくなるから。この外気温なら塩でも効果があるんじゃないかと思って。それと魔獣ですからただの塩をかけてもダメかもと思ったので、少し魔力を込めた塩を振りました。塩が付着した部分が溶けてくれると良いのですが。」
「ボラン中隊長失礼します。」
「あぁ。入れ。」
「ヌベール団隊長、失礼いたしました。」
ルシアンが居ることを知らなかった隊員は恐縮したように礼をする。
「構わない。報告を。」
「はい。山火事鎮火したと報告ありました。」
ルシアンは、里桜の方を見ると、何も言わずテントから出ていった。里桜も慌ててその後を追う。
「部下が何頭かは仕留めたと言っていたが、まだこんなにいたのか。こいつらが群れを作ることは珍しいし、飛べる魔獣なのになぜ飛ばない。」
「まさか、あの小さいのが子供のエイスクルプチュルで、それを守ってるってことはないですか?」
「エイスクルプチュルはそもそも温暖な地には巣を作らない。一日の移動距離は四万キロ以上と言われていて、我が国の様な温暖な地で餌を捕り、永久凍土の北の地へ帰ってそこを寝床としている様だ。子育て中に気が荒くなる様なこともないと昔読んだ覚えがある。しかも、雌は卵を産んだきり子育てはせず、雄が卵から孵し、一人前になるまで育てると書いてあった。」
「では、あんな風に群れでここにいることは今までになかった事なんですね。しかもあんなに激しく暴れてる。」
「山火事が発生する前からあんな状態だったらしい。不幸中の幸いと言うべきか、山火事があったからエイスクルプチュルをあそこに止めておけているようだ。」
「だから一層なぜ飛んで逃げずにあそこにとどまっているのかも不思議ですね。…だけどあんな風に暴れているんじゃ、いつ民間人に犠牲を出すかわからない。」
「あぁ。森を抜ければ港町もある。そこには沢山の国民がいる。魔獣とは言え命だが、人々を守るためだ。君にどんな策があるのかは分からないが、出来るか?」
「はい。まず一案目、行ってきます。」
ルシアンが聞き返すまでもなく、里桜は天馬を下降させ、エイスクルプチュルに近づくと何か白いものを五頭に振りまいた。
∴∵
「リオ様は大丈夫だろうか。」
テントの中で上を見ながら、ぽつりと言った。
「ロベール様は彼女が心配ですか?」
「それは、心配だ。これが初陣だ。しかも天馬で…。」
「リオ様のあの様子じゃ、天馬に乗るという事がどう言う事か陛下から説明を受けていないのでしょうな。」
シドは苦笑いの様な何とも言えない笑いをこぼす。
「陛下もお若い。こうして外堀から埋めようとなさるとは。」
「戻りました。」
里桜の声がテントに響き、その場にいた全員がそちらに向いた。
「いたのは全部で五頭。うち一頭は子供なのかも知れません。少し他のより小型でした。今は山火事に囲まれて足止めが出来ている状態でしたが、いつそれを超えて港町に行くかわかりません。」
「理由は分からないが、この辺りに五頭が固まってとどまっていて、風を飛ばしたりとだいぶ暴れている。」
ルシアンが、地図を指す。
「魔獣の中では気性が穏やかなエイスクルプチュルにしてはめずらしい。」
「実は今、上から塩を撒いてきました。」
「塩?」
「本当は塩化カルシウムを出したかったんですけど、雪国育ちではない私には身近でなかったのか、精製の仕方を知らないせいか、出せなかったので…やむを得ず。」
「どうして塩を?」
「塩は氷を早く溶かすんです。溶けて塩水になれば再氷結するのにも時間がかかるんじゃないかと。塩水は氷点が低いので真水より凍りにくくなるから。この外気温なら塩でも効果があるんじゃないかと思って。それと魔獣ですからただの塩をかけてもダメかもと思ったので、少し魔力を込めた塩を振りました。塩が付着した部分が溶けてくれると良いのですが。」
「ボラン中隊長失礼します。」
「あぁ。入れ。」
「ヌベール団隊長、失礼いたしました。」
ルシアンが居ることを知らなかった隊員は恐縮したように礼をする。
「構わない。報告を。」
「はい。山火事鎮火したと報告ありました。」
ルシアンは、里桜の方を見ると、何も言わずテントから出ていった。里桜も慌ててその後を追う。